テニスの王子様

□お手本
1ページ/3ページ

今日は合宿の2日目。
朝から晩までの厳しい練習を終え、宿の温泉で疲れを癒した僕らは自分たちの就寝する部屋に戻ってきた。
部屋は2人部屋が5つ連なり襖で仕切られており、襖を全て開け放つととても広い大部屋になる仕様だ。
今は全て開け放っていて風呂から上がったみんなが寝るまでの間、談笑できるようにしている。
手塚と2人部屋の僕は5つの部屋の中心に位置する部屋で手塚とこそこそと話をしていた。
「手塚。どう切り出せばいいかな?」
「どうといわれてもな。大石と菊丸にだけ伝えられると一番良いんだが…。」
手塚と僕は付き合ってからもう3ヶ月以上もたっているのに未だにキスより先に進めていない。
お互い進みたいのは伝わっているのに雰囲気が何故か全く作れない。
手塚はまだしも僕も自分がこんなに雰囲気の作れない人間だとは思わなかったよ...
なんだかんだお互い真面目過ぎるというか...
それで合宿という都合の良い状況の今、いつでもラブラブオーラが出ている英二と大石に相談してみないかという話になった。
そもそも英二達が既にしているのかという点については惚気られているから確実。
そういえば、乾や桃達はどうなんだろう...
乾達は付き合っているけど全くその素振りは見せないし、桃達も相変わらず見ていてほのぼのするような絡みしか見たことがない。
僕は何気に進めていないことにコンプレックスを感じているけど、手塚はどこまで思ってくれてるんだろう。
「不二。俺は大石に相談してみる。菊丸の方は任せる。」
「了解。」
こんな話も普通だったら恋人としないんだろうけど、真剣に考えてくれてるってことは良い意味にとっていいのかな...




「そういう訳なんだが…。」
「...えっ?」
真剣な表情で相談があると手塚に言われた大石はテニスのことだろうかと身構えていたが、思いもよらない相談の内容と意外な事実に呆けた表情になった。
「?どうした。」
「いや、手塚達は俺達より先にとっくに.....かと...」
「何故だ?」
「なんか雰囲気というか…。」
手塚と不二が付き合ったあとも付き合う前と変わらない様子であったため、なんとなく色々あるけど普段には出さないようにしているのだろうと大石、そして恐らく大石以外のみんなも思っていた。
「...結局どうなんだ?」
「えっーとアドバイス?というか雰囲気作りだよな?」
「ああ、本当に自分が不甲斐ないが...、どのようにすれば良いんだろうか...」
大石は滅多に見ない手塚の反省しているようなもどかしい表情を見て、いつも助けられている分、心から協力したいと...少しおかしい方向に気合いが入ってしまった。
「...じゃあ...英二と相談して、雰囲気作りするから、手塚達はその雰囲気に乗っかって...」
「………?」
何故か少し照れた様子の大石と、言葉の意味があまり理解できない手塚。
その2人の背後に黒い影が近づく...
「なるほどな。」
「「っ乾!?」」
「俺もその話詳しく聞きたいな?」





「そういうことなんだけど…。」
「...へっ?意外!なーんか不二達が最初だと思ってた...」
大石と同様不二達の関係に驚く英二。
「まあ...僕もそうしたかったんだけどね。」
こんな相談を友人にする日がくるとは思ってもなかったよ。
「どしたの不二、なんか大胆だにゃ?
...で雰囲気作り教えてって、もしかして俺らがやるの?」
「え?やるって今日ここでやろうとしてるの?」
照れた表情でぼそぼそと喋る英二の驚きの提案にすかさずツッコミを入れる。
「う、うそ違った?」
「いや...うん、それでうまくいくならお願いしようか、な......」
なんとなく自分のことを本気で思って恥ずかしい提案してくれた気がして、ついお願いなんて言ってしまった。
ほんの少しだけ2人に気まずい空気が流れるなか、盗み聞きをしていた少年が1人。
「面白い話してんじゃないっスか。」
「うわっ!...おチビ!後ろから話しかけんなよ!」
突然の後輩の登場に動揺する先輩2人。
「ふーん。不二先輩達まだやってなかったんスね。」
「...越前?もしかして…」
後輩の口ぶりにひとつの答えを感じ取り珍しく動揺する不二。
「…まだまだだね。」
「あー.....えっと不二...多分今ここにいるメンバーでしてないのって、不二達だけかも...」
気まずそうに不二に告げる英二。
…...何をグダグダやってるんだ僕達は…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ