戦国

□鳥
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空は雲一つなく、とても澄んだ青空で、
風はその青々とした空の中を悠々と
吹き渡っていた。

「毛利・・・。」
知らず知らずのうちに口に出してしまった
アイツの名前。

「長曾我部・・・。」
我としたことが・・・。口に出しては
ならぬと思っていたのに・・・。


二人はもう終わった仲だった。どちらも
男という厚い壁は容赦なく二人を
離れさせた。
そして二人は空を見ながらふう・・・
とため息をつくのであった。

もう、会わなくなってからどれほど
たつだろうか。日付感覚がおかしく
なりそうだ。
一週間?いや、そんなもんじゃない。

俺が行こうか。会いに・・・。
いや、会ったら家臣からの反感を買う。

我が貴様を奪ってやろうか。
いや、そんなことをしたら・・・。

結局はどちらも会いに行ける状態ではない、
ということだ。

でも・・・。愛している。そうだ。
俺はあいつを・・・。
我は貴様を・・・。








愛しているんだ・・・。

考えるだけでこの青い空に腹が立つ。
何も知らずに悠々と吹いている風でさえ
ムカついてくる。
その時。二羽の鳥が仲睦まじく飛んでいた。
小さい鳥と大きな鳥。その体格差が
二人になんとなく似ていた。

あぁ、そうだ。あの鳥は何も知らないのか。
世の中の常識何もかも。
俺らがあの鳥だったら・・・。



鳥になりてぇよ・・・。毛利・・・。



鳥か・・・。仲睦まじく飛んでおるわ。
イライラする。あの鳥は何も感じぬ。
悲しみも苦しみも。いっそのこと・・・。


鳥になりたい・・。長曾我部・・・。




どこかで歩いていて貴様に偶然に出会ったら
なんて幸せなんだろう。
そう思いながらふらふらと城の周りを
毛利元就は歩いていた。
その時である。



「毛利!!!!!!!!!」


忘れなければならない、もう振り返っては
ならない。でもあの聞き覚えのある声。



「長・・・曾我部・・・?」
「やっぱりアンタがいなきゃ・・・。」
「ばか!!あれほど忘れろといったのに!」

「やっぱり・・・愛してる・・・。」
そういって優しく元就を抱き寄せる。



空は雲一つなく、とても澄んだ青空で、
風が抱き合う二人を優しく包み込んだ。

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