短編

□ゲームは一日一時間
3ページ/5ページ

「今度は旦那が誘ってみれば?」
「うむ…。」

幸村はがっくりと肩を落としながら、先程のプレイヤーに話しかけた。

『先のお手前、見事でござった。今度は某から、勝負を受けてくださらぬだろうか?』

dokuganryuは少し考える素振りをしたが、結局、

『OK!!で、何を狩るんだ?』

幸村は、んーと悩んだ末、ドボルベルク2頭の討伐にした。
ドボルベルクなら、自分も少しは戦っているし、動きも単純だ。

大きな尻尾をぐるんぐるんと回し、遠心力で飛び上がる。
避けるには、ひたすら動き回っていればよいのだが、巨体が巨体なだけに、喰らった時のダメージはでかい。

『今度こそ負けないでごさる!!』
『ハッ!!その鼻、へし折ってやるぜ!!』


《クエストを開始します》






ここで、ふたりの間に新しいルールができた。
とある道具を使うのだ。

それは、ペイントボール。

ペイントボールは、モンスターに投げつければ、画面右のマップにそのモンスターの位置がピンク色の丸となって表示される。

いっぺんに離れた所へエリア移動してしまう飛竜種などのモンスターに、とても有効だ。

モンスターはしばらく放っておくと、回復しかねない。
素早く駆けつけるのも大切なのだ。


そして、このペイントボールには、もう一つ能力がある。

それは、ペイントボールを付けた状態で倒されると、表示されている目印の色が、ピンクから灰色へと変わるのだ。
つまり、相手が戦っているモンスターの位置と生存が確認出来るという訳である。

幸村のアイコンの色は赤、dokuganryuのアイコンの色は青、どちらかの色の近くにあるピンクが消えたら、勝負は決する。


ピンクの目印が一つ消えた。
近くのアイコンの色は、青。

『うわぁぁぁぁ!!佐助ぇぇぇぇ!!また負けてしまったぁぁぁぁぁ!!』

幸村は嗚咽混じりに、泣きじゃくっている。
自信があっただけに、相当悔しいようだ。

「旦那を泣かす奴は許さない…dokuganryu…、二度とプレイしたくなくなる位叩きのめしてやる…。」

佐助の瞳の奥の闇が、少しだけ出てきた気がした。
幸村に変わり、佐助がパソコンを操作し始める。

『dokuganryuさん!!本当に強いねぇ!!お願い!!あと一勝負!!』

dokuganryuは、2連勝で、よほど気分が良いのか、二つ返事でOKした。

今回のモンスターはあの轟竜、ティガレックス。



《クエストを開始します》




圧勝だった。

佐助はティガレックスから一度も攻撃を食らわず、ひらりひらりと猛攻を交わし、的確にティガレックスの頭にダメージを与え、倒した。

勿論、もう一つのピンクの目印は付いたままだ。

「佐助…、凄い…。」
「あはは〜!!昔を思い出しちゃった。」

かなりやり込んだのだろう。

防御と攻撃の切り替えが速く、まさに攻撃は最大の防御。

「ん?負け犬(dokuganryu)が何か言ってる。」

『くっそ〜、もう一回!!もう一回だ!!』
『いいよ♪』


今度はディアブロスか。

「(アイツ、デカイ癖にちょこまかしてめんどくさいんだよね〜。まあ、これでアイツももう力の差が分かるだろ。)」



《クエストを開始します》
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ