短編
□ゲームは一日一時間
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数日後、幸村はもの別人のようにになっていた。
装備は上位のモンスター装備に、農場やオトモもかなり充実していた。
本人は、夜遅くまでプレイしているため、目の下には濃い隈ができ、頬は心なしか痩せこけているようにも見える。
「佐助…、眠い…。」
「旦那!!夜更かししちゃ駄目だよ!!今日から、モンハンは8時まで!!」
「えぇー…。」
幸村は、口を尖らせたが、反論できなかった。
ゲームに熱中しすぎて自己管理を怠るなど、恥ずかしいにも程がある。
ちょうどシャットダウンしようとディスプレイを見つめ直した時、
「ん?何か旦那に誘いが来てるよ?」
「なっ!?そんなシステムがあったのか!?」
モンハンには、最大4人まで一つのクエストを仲間とクリアできるシステムがある。
何も知らずよくここまで来たな、と逆に感心しつつ、誘って来た相手を確認する。
「えーと…、ハンドルネーム“dokuganryu”…。」
独眼竜?まさか…。
「佐助!!dokuganryu殿が、その腕を見込んで、一緒に狩りに行かないか?とのことでござる!!」
「まあ…、いいんじゃない?でも、リアルの方で会おうとか言われたら、ちゃんと断るんだよ!!」
ここで辞めさせたら、もしかしたら、もしかしたらだけど、明日、竜の旦那にブッ殺されるかもしれない。
佐助はしぶしぶ首を縦に振った。
「うむ、承知した!!」
幸村は何かカチャカチャとコントローラーをいじると、またパソコンの前で固まり、動かなくなった。
「えーと…、ナルガクルガ2頭の討伐…。」
行くぞ!!、と大々的に宣言し、クエストに出かけた。
『はじめまして、yukimuraさん。dokuganryuです。』
『初にお目にかかります!!某、yukimuraと申すものでござる!!』
『実は…、その腕を見込んでというのは建前で、勝負しませんか?』
『それはどういう…?』
『ナルガクルガ2頭、俺が1頭、yukimuraさんが1頭、どっちが早く倒せるか勝負しましょう!!』
『承知致した!!探すのも既に勝負ということですな!!』
『sure!!じゃあ…Let's party!!』
というやりとりのあと、なんやかんやで討伐勝負が始まった。
<<クエストを開始します>>
「むっ!!ナルガクルガ発見!!うぉぉぉぉぉ!!」
「旦那!!ナルガクルガの弱点は頭だよ!!」
佐助がサポートしつつ、幸村は見事な双剣捌きでナルガクルガを翻弄していく。
武器が強いせいもあって、頭に一撃を叩き込めば、容易に怯ませることができた。
5分もすれば、幸村はナルガクルガの動きを完全に見切り、ひょいひょいと攻撃をかわしつつ、確実に急所に攻撃を加えていった。
「おぉ!!こやつ、もう涎を垂らしているぞ!!」
涎を垂らすのは、モンスターが疲労している証拠。
この隙に攻撃を加えれば、容易く転ばせることや、怯ませることができる。
「旦那!!止まってる今がチャンスだよ!!鬼人化“乱舞”を叩き込んじゃえ!!」
「うぉぉぉぉ!!くらええぇぇぇぇ!!」
《ザクッザクッザシュッ!!…、ドスーン…。“クエストを達成しました。後1分で村に戻ります。”》
「やったぞ!!佐助!!ナルガクルガを倒したぞ!!」
「うん、旦那。喜んでる所悪いんだけど…、旦那が倒してクエスト達成ってことは…、向こうはもっと早かったんじゃない?」
一瞬、間が空いた。
幸村は佐助の言葉を理解しようと、必死である。
そして…、
「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
漸く理解したようである