夢の旅 妖怪
□Story
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「え、」
ブスリ、と刃物が腹に刺さり、ズブッと刃物が腹から抜けていく感覚。
倒れ行く俺の体。
ドンッと衝撃を伴って床に横たわる。
赤い液体が俺の体を中心に広がっていく様子を知らない男が見下ろす。
―――何か俺、したっけ?何の恨みがあってこの男は俺を刺したんだろうか?
そんな疑問が俺の頭の中を覆い尽くす。
まず、この男。
明らかに初対面だ。
「貴方が俺の事を見てくれなかったから・・・愛してくれなかったから・・・」
なにかをブツブツと言っているようだけれど、意識が薄れてきたせいか聞こえない。
俺って・・・死ぬのかなァ。
ゴフッ、と口から血を出す。
「貴方を俺が殺せば貴方は俺のものになるんだ・・・!俺だけの物に・・・」
ハッキリと聞こえたその言葉に、一言返してやる。
「俺は、誰のものにもならねェよ。」
そう言った瞬間、男の顔が歪んだように見えてニヤリ、と笑う。
ザマーミロ。
そう思った瞬間、視界が暗くなっていった。
あぁ・・・俺、死ぬのかな?
まだ、死にたくないんだけどなぁ・・・。
呆気無く終わった俺の人生。
(お・・・よ・・・きろ・・・)
((ふと、そんな声が聞こえた気がした。))