千本桜

□〜ドリランド物語〜
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このお話の主人公

病人のリンと

囚人のレンの

悲しい物語ーーー…


リンはいつものように病院を抜け出して、パパの仕事場である警察署に行った

そこには、囚人のレンがいつものように紙飛行機をもって、待っている


「はい!これが今日の手紙っ!」


リンは檻から少し離れて、上に向かって紙飛行機を飛ばした

紙飛行機は風に乗って、檻の中へするりと入っていった

レンは飛んできた紙飛行機を落とさないように静かにキャッチする


「ありがとう!こっちは僕の!」

レンも自分が書いた手紙を紙飛行機にしてリンの方へと飛ばした

リンはすかさずキャッチして


「またね!囚人さん!!」


と一言いって帰っていった


「さようなら!またねー!!」


(また来てね、病人さん!)



病院に戻ると早速、手紙を開いた

内容を何度も何度も読み返した

(囚人さん…今何しているのかなぁ…)

リンはそんなことを考えながら深い眠りについた






「…ううん…?」


リンはふと目を覚ました


(やば…寝てた?)


うっすらと目を覚ますと、目の前には紙飛行機を手に持ったお父さんの後ろ姿


「お父さん!だめ!手紙を読まないでっ!!!」


リンは必死になって手紙を奪い返そうと手を伸ばすものの、お父さんには届かなかった

お父さんはすべて読み終えるといきなり手紙をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱にすてた


「リン…あいつには絶対に会うな、分かったか」


お父さんはそう言い残して病室を後にした


「うぅ……なんで…なんでぇ…?」


(…囚人さん……)



そう、二人はお互いの名前は知らなかった

それどころか、聞こうとも思わなかった

だって…心が繋がっているんだもん…名前は知らなくても大丈夫!

リンとレンはいつもそう思っていた


リンは重い病にかかっている

レンは罪もないのに捕まっている

二人共、とても辛い日々を過ごしていた





…日に日に増える管の数

…遠くなる耳

歩くのもかなりきつくなったかな…


「…囚人さん……」


(もうここから生きて出られないのならば、最後に…あなたに心配だけはかけたくないから…)

リンは震える手でペンを持ち長い文章を書くと、紙飛行機にして病室を出た

手すりを掴んでようやく歩けるほどに寿命が縮んでいる…

そんなことを思いながら頑張って走った…


「し、囚人…さん…」


「病人…さん?」


レンは、リンが息切れをしながら走ってきたことにとてもびっくりしていた

リンは紙飛行機をそっと飛ばした

レンは飛んできた紙飛行機を取ると直ぐに内容を読んだ


「あの…これ、どういう…?」


「そのまんまの意味だよ?…さよなら、囚人さん…」


リンはレンに背を向け、そのまま歩いていった…







「待つよっ!!!」



レンの言った言葉に動揺してリンは立ち止まった



「いつまでも待ってるよ…君が来るその日まで…手紙を、大事になくさずにいたら、また…会えるよね…?」


リンはその言葉を聞いて泣きながら病室に帰っていった


レンも、リンが見えなくなるまでずっと泣かずにいたが、見えなくなると檻の手すりを強く握りしめて泣き出した


「病人さん…また会えるよね…」







「安定しません!!」


「リン、リンっ!!!!」


お父さんの声が聞こえてきた

(苦しい…

私…もうすぐ死ぬのかな…?

あぁ…どうか、またあの人に…





ピッピッピッ………






「病人さん…大丈夫かな…」


レンはリンに危機が迫っていることにまだ気づいていなかった

レンは紙飛行機をはじめから読み直していた





「…おい」


「えっ?」


振り返るとそこには警察服をきたリンの父

すると、レンから紙飛行機を奪い取った


「あっ!何するんだよ、返せ!!!」


取り返そうと飛びかかるが、他の警察官に邪魔をされて取り返せない


「リンと手紙でやり取りか…こんな物…!!!」




ビリッ!!!




破かれた


しかも目の前で


レンは頭の中が真っ暗になった



はらはらと落ちてゆく手紙の破片


全てレンの目の前に落ちていった



「…ぅ…ぅうああ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


我を忘れてリンの父に飛びかかった

レンの放った拳はリンの父の頬に当たり、父はそのまま倒れこんだ


「こらぁ!!誰かこのガキ抑えろぉ!!!」


レンは父の胸倉を掴み殴ろうとしたが涙が溢れ出て殴る気が失せた


「うぅ…うわあぁぁ!!!」


レンは泣き崩れた

罪は重くなり、“処刑”にせよと下された






ピッ…ピッ…ピッ……



あれから幾月

もう体は動かない

お迎えはもうすぐ来るのかな…

あのときの別れ際に

強がらなければよかった…

でも、もう遅すぎた……

今もどこかで笑うあなたに…


会いたい…会いたい…会い…た……




ピッ…ピッ…ピーーーー……





君がいたからずっと私たちは



笑顔を忘れずにいられました



深い闇が二人を切り裂いて



深い闇がまた巡り合わせて



また明日…



……あの場所で
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