その他テイルズ小説

□霊峰での依頼
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船に戻り、報酬を山分けした後、マオはカイウスの部屋について行った。
ルビアはアニーたちと遊んでいるから部屋にはいないらしい。

「マオ、何か怒ってる?」

カイウスは心配になって聞いた。さっきからずっと、マオが不機嫌なのは明らかだった。

「別に…怒ってないヨ。」

マオはそう答えたが、カイウスはマオをベッドに座らせ、自分も隣に座った。

「なあ、教えてくれよ…絶対、お前怒ってる。」
「…だって…。」

言い淀むマオ。本当に、本当に些細なことだから――言いたくなかったのだ。

「ん?」

カイウスに促され、(ごまかせないな)とマオは悟った。

「あの…ティアが、カイウスに抱きついたじゃない。」
「ああ、あの時か。」
「で…それがなんかイヤで。」
「…は?」

ポカンとマオを見るカイウス。マオはカイウスの方を見ず、下を向いて続けた。

「だってカイウス、抵抗しなかったし…。ティアもなんかおかしかったし。」
「…仕方ないだろ、あれはビビるよ。」
「でもやっぱり、カイウスも女の人の方がいい…よネ。」
「え?」
「ほら…ティアって、胸大きいし…。」
「…。」
「ボクじゃ、かなわないかなー、なんて、思っちゃってさ。」

そんなこと考えてたのか、と、カイウスは驚いてマオを見た。
マオにしては珍しく後ろ向きだ。

「何言ってんだよ、オレはお前が…お前だけが好きだよ。」
「…でも…。」

カイウスは至って普通に、当たり前のように言ったが、マオの声は沈んだままだった。

「やっぱり、ああいうの見せられると、自信なくなっちゃう、っていうか――っ!?」

マオは驚いて目を見開いた。というのも、カイウスがマオにいきなり口づけたからだ。
しばらくそのままでいたが、やがてカイウスが唇を離した。

「――いきなり、何…。」
「だって、マオが分かってくれないから…。」

マオは顔を赤くして、遠慮がちにカイウスを見た。

「信じてくれない?」

そう言ったカイウスの瞳は、あまりにも切なそうで。
顔も赤く、そんなカイウスをマオは可愛いと思った。

「…クス。」
「な、なに笑ってんだよ。」
「可愛いヨ、カイウス。」

何度も言われたその言葉。
だが、カイウスは未だに納得できなかった。

「…お前の方が、可愛いよ、オレにとっては。」

カイウスはマオの頭をなでた。
その心地よい感覚に、しばらく身を預けるマオ。

「好きだよ、ずっと…。」
「オレも、好き――」

どちらからともなく、再びキスをし、抱き合った。
今度はさっきより深く、長く口づける。
やがて呼吸が苦しくなったのか、マオが唇を離した。

「大丈夫か?」
「うん。へーきへーき。」

そう言ってカイウスの肩に顔を寄せるマオ。

「ごめんネ、疑ったりして。」
「いいよ。…でも、もうティアの前じゃ獣人化できないな。」

カイウスがそう言うと、マオがまた笑った。
こうしてマオが笑っているだけでも、幸せだな、とカイウスは1人思い、マオを優しく抱き寄せた。


→後書き


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