ロイジニ30題
□07-喧嘩
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部屋に入ると、案の定気まずい空気が流れる。
「…ねえロイド。」
「ん?」
返事はしても、ジーニアスの方は見ない。
「最近、ボク…何かした?」
「…何かって?」
卑怯だ。分かっていた。でもそう聞き返すしかなかった。
「だって…ロイドはボクと話してくれないし…。部屋も違う部屋にしてたじゃん。」
「…。」
もはや隠しきれないか。
「…お前が…。」
「え?」
「お前がミトスのことばっかで…。俺と話してるときよりも、ミトスと話してるときの方が楽しそうに見えてさ…。だから俺…。」
改めて考えると、なんと情けない。
「じゃ、ミトスと話すなって言うの?」
「そうじゃない。けど…もっと…こう…。」
「…ロイドは分かってない。分かってないよ。ミトスはボクの初めてのハーフエルフの友達で…。」
「じゃあお前は俺とミトス、どっちが大事なんだよ!? 俺はハーフエルフじゃないからダメなのか!?」
ホント、ジーニアスを傷つけたと思う。
「…そんなの…。」
「ハーフエルフだから何だよ! 俺はお前の恋人だろ? だったら…。」
「…ロイドはハーフエルフじゃないから! …だから、分かんないんだよ。ボクの気持ちなんて…。」
その時初めて、俺はジーニアスの顔を見た。
ジーニアスの目は涙で潤んでいて。ああ、傷つけた、と思った。やっぱり俺は最低だ。自分のことしか…考えられない。
「…そうだよ。俺は人間だよ。でも…ジーニアスのことが好きだ。」
だから衝動は抑えられない。俺はジーニアスの肩を力強くつかんだ。
「ミトスなんかよりずっと、お前のことが…好きだ。」
そう言ってジーニアスに口づける。いつもより荒く、舌を侵入させる。
だが、ジーニアスがすぐに顔を離してしまった。
「…何すんのさ、急に…。」
「好きなんだよ、お前のことが…。」
ベッドにジーニアスを押さえつけた。
「…ロ、ロイド?」
そのままジーニアスの首筋に顔をうずめる。その綺麗な首に口づけ、舌で舐めた。
「やっ…やめてロイド!」
ジタバタ暴れ出すジーニアス。だけど俺の力には勝てない。そのまま俺は行為を続けた。
舐める度にジーニアスは体を震わせ、声を上げる。その反応がしばらくは快感だった。
でも。
ジーニアスの目から溢れ出した涙を見て、その気持ちは一気に沈んでいった。
「ご、ごめん…。」
慌てて手を離す。だがもう遅かった。
「ロイドの…バカ…!」
「ごめん…俺…っ…。」
「もうやだ! ロイドなんてボクのこと何にも分かってない!」
浴びせられる言葉。
「今までの…優しかったロイドは、どこ行っちゃったのさ…。」
そう言って布団に入るジーニアスを、俺はただ呆然と見ているしかできなかった。