ロイジニ30題
□06-けん玉
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「よーし、やっと終わったぜ!」
授業が終わると、ロイドは、そしてたまにコレットも、さっさとボクのところに来る。そのまま遊びに連れ出すのだ。
今日はロイドだけだった。
「さ、プレゼント渡すから、来いよ。」
ロイドに言われて学校を出、村の広場に向かった。
「ジャジャーン!」
「これ…けん玉?」
ロイドに渡されたのは木製のけん玉だった。子供の遊び道具だが、この村ではあまり見ない。
「この前買ってきたんだ。俺もやってみたけど、全然できなくてさ…。やってみろよ?」
遊び方は知っていた。適当に色々試しているうちに、段々とコツが分かってくる。
「お前上手だな〜。」
「へへ、そう?」
タン、タン、タン…。聞き心地の良いリズム。これ、呪文の詠唱で役立つかも。
しばらくして、けん玉の持ち手に刻まれた模様に気づく。
「これは…?」
「あ、それは俺が彫ったんだ。」
「へえ…。そういえばロイドって図工は得意だったね。」
「図工『は』って何だよ、他にも…。」
「後は体育だけじゃん。あ、給食も?」
「この野郎〜っ!」
ロイドに抱きかかえられ、お腹をくすぐられた。
「わっ、やめて…はは、くすぐったい…!」
「へへ、これで懲りたか。」
「うう〜…。」
改めてけん玉の模様を見る。不思議な…文字のような、絵のような模様。
「それ、古代なんたら語で『友情』って意味なんだ。」
「『友情』…。」
古代なんたら語はさておき、その意味は嬉しかった。もう今までの誕生日とは違う。今は、大切な友達がいるから。
「ありがとう、ロイド!」
嬉しさのあまりロイドにギュッと抱きついた。ロイドはへへ、と笑って頭をなでてくれた。
「そうだ、コレットにもらったクッキー…。」
カバンからクッキーを取り出し、ロイドに一枚差し出した。
「お前へのプレゼントだろ?」
「でも、一緒に食べよ?」
そう言うとロイドはクッキーを受け取り、パクッと食べた。ボクも別のを食べる。
程よい甘味が口に広がる。まるでコレットの優しさのようだ、と思った。
「うまいな、これ。」
「うん、おいしいね。」
ロイドも気に入ったようだ。今度ボクも作ってみようかな…。
数日後、ボクがコレットとロイドに作ったクッキーの中の一枚――コッソリとロイドに渡した一枚――には、チョコソースであの模様を描いていた。