BATTLE ROYALE

□信史の悩み
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信史は屋上に1人でいた。
社会なんて、受ける価値はない。どうせこの国をほめることしかしない教科だ。
そう思いながら、屋上でのんびりと考え事をしているのだ。

豊のこと。
考え事はそれだった。

幼馴染で、ずっと一緒にいたのに、最近色々とやばい。
今まではただの親友だったけれど、そう、信史は彼のことが好きなのだ。
普通は異性に対して持つような、恋愛感情がそこにはあった。

豊のどこが好きかって?
まず見た目が可愛いだろ、ちっちゃくてさ。それと一緒にいると楽しい。無邪気にずっと笑ってるから、こっちも幸せになれる。
そして優しい。信史が試合で負けたりした時は気遣って、慰めてもくれる。

とにかく、一緒にいるだけでも幸せだった。
だけど…幼馴染をそんな目で見る自分が嫌だった。
あいつは純粋無垢で、そんなことこれっぽっちも思っちゃいないだろうから。

…駄目だ。
考えていても仕方がない。
言えるわけがないのだ。こんなこと。言ったら気持ち悪がられること間違いない。

チャイムが鳴って、信史は立ち上がった。4時間目は数学だ。
まあ、数学なんて受けなくても分かるけど、内申点にも響く。必要な教科はできるだけ受けておいた方がいい。
それに、豊の顔が見れるだけでも、教室に行く価値はありそうだった。

その後、教室へ行く途中、稲田瑞穂と鉢合わせした。
ゲッ。この女は苦手だ。自分が光の神アフラ・マズダに仕える光の戦士プリーシア・ディキアン・ミズホだと、本気で思っているのだ。

「フィリリル・リルディゲ・シンジ。」

稲田がそう言った。最初、信史は、その言葉が自分に向けられたものだとは気づかなかった。

「聞こえないのですか? 戦士フィリリル・リルディゲ・シンジよ。」
「…何だい?」

信史はようやく返事をした。…この女は苦手だ。

「あなたは、今、恋をしていますね。フィリリル・リルディゲ・シンジ。」
「!?」

あまり女子の中心グループと関わりがない稲田が、そんな噂話を知っていたことが驚きだった。
それほどまでに噂になっているのだろうか。

「…どうして?」
「アフラ・マズダ様が教えて下さったのです。悩める者には救いの手を差し出すのも、光の戦士プリーシア・ディキアン・ミズホの役目。」

稲田は水晶玉を出してそう言った。そのまま光の神へと、精神で語りかける。
アフラ・マズダ様。この悩める者には、どのようなことをすればよいのでしょう。
ミズホよ。彼の想っている人が、私には分かります。
誰なのでしょう。
それは言えません。彼の個人的な感情を、私はあなたに教えることはできません。
そうですか。では、その人は彼のことをどう思っているのでしょう?
とても大切に思っていますよ。もう少し押せば、両想いになれます。
そうなのですか?
はい。ミズホよ。彼に伝えるのです。光の戦士の役目を果たすのです。
はい、アフラ・マズダ様。
よろしい。さあ、ゆくのです!

長い長い沈黙の後、稲田は言った。

「フィリリル・リルディゲ・シンジ。」
「…その言い方はやめてくれよ。」

信史はいい加減嫌気が指していた。何が、フィリール・ルルヂゲ・シンジだ。第一俺は戦士なんかじゃない。

「もう少しです。もう少し押せば、あなた方は恋人同士になることができるでしょう。」
「…は?」
「アフラ・マズダ様が、私に語りかけたのです。間違いはありません。あなたの想い人も、あなたのことをとても大切に思っているのです。」
「…そうか。ありがとな。」
「では。汝に、アフラ・マズダ様のご加護があらんことを。」

ようやく稲田から解放されて、信史はホッとした。
だが…
もう少し押せば、あなた方は恋人同士になることができるでしょう。
あなたの想い人も、あなたのことをとても大切に思っているのです。
信用…できるのだろうか。いや、できるわけないが…。
それでも、稲田の占いはよく当たると、女子の間では評判にもなっていた。
もしかしたら…そんな一抹の期待を胸に、信史は教室へと戻った。

よろしい。使命を果たせたのですね。
ミズホは、また光の神と交信(?)をしていた。
はい。アフラ・マズダ様。プリーシア・ディキアン・ミズホ、役目を無事果たしました。
よろしい。それでこそ光の戦士です。フィリリル・リルディゲ・シンジの明るい未来を、私も願っていますよ。
私もです。アフラ・マズダ様。
稲田もそのまま教室へ入っていった。


→後書き

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