BATTLE ROYALE
□学校の屋上
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昼休みの屋上。学校内――おもに中3の様々なグループが弁当を食べている。
それは秋也たち5人も、あの桐山グループも含めて、だ。
桐山グループがどんな話をしているのかは知らないが、不必要に関わる必要もないので、彼らとは離れた場所で食事をする生徒が多い。
秋也たちも同じだった。
「でさー、今日の林田先生、すごい面白かったよねー!」
「ああ、あの教壇でコケた時だろ?」
「『全く、なんだこの教壇は…!?』とか言っちゃってさ。自分が悪いのにね。」
5人の笑い声が響く。桐山達が怪訝そうに秋也たちの方を見たが誰も気づかなかった。
ちょうどその時,授業開始5分前を告げる予鈴が鳴った。
「さあ、そろそろ戻るか。」
と杉村。5人は片づけの準備を始めた。だが信史は、次の社会が大嫌いだったので、
「悪い、俺5限サボるわ。」
サボることに決めた。
「え〜、またかよ。」
「あんまりサボると評定低くなるぞ。」
慶時と杉村に言われたが、評定なんて信史にはどうでもよかった。そもそも高校に行くかどうかすら分からないのだ。
じゃあまた後でな、と4人が帰っていく。しばらく経つと、桐山たちも出ていった。あいつらも出るのか…それとも帰るのか。
信史が1人考えていると、なぜか秋也が戻ってきた。
「俺もサボることにした。」
「へ〜、珍しいな。」
秋也がサボるのは主に数学。社会をサボるのは稀だった。
だがサボるにしては表情が少し固かった。
「まあ、たまにはいいだろ。」
と言って秋也はベンチに座った。
「あのさ三村。」
「ん?」
「この前の告白のことだけど…。」
ああ、やっぱりその話題か。
信史は、2週間ほど前、夏休み終盤の夏祭りで、秋也に人生初の『告白』をしたのだ。
自分からそんなことしなくても、今までは女の子がたくさん集まってきたから、する必要がなかったのだ。
2週間の間、信史は色々と考えていたが、秋也がそれについて何も言ってこないので、信史もあえて触れなかった。
「俺は本気だぜ。」
「分かってるよ。…で、あれから色々考えたんだ。」
自分が本当に信史を好きなのか、秋也は2週間悩んでいたらしい。
「ほら、俺達男同士だし…。そういうの、よく分かんなくて。」
今も表面上は笑顔で話しているが、実際相当悩んだのではないか。信史は思った。
「で、分かった。」
「…何が?」
内心ドキドキしながら秋也の言葉を待つ信史。
「俺、三村のこと好きなんだって。」
その言葉を聞いて、信史の心臓がどれだけ跳ね上がったか。もちろん表には出さないけれど。
「じゃ、俺とつき合ってくれるの? 七原。」
信史の問いにコクリとうなずく秋也。
「えーっと…。俺自身もまだよく分かんないんだけどさ。」
「何だよ、三村らしくないな。」
信史は戸惑いながら、秋也の体を抱き寄せた。
「いいんだな?」
「え? 何が?」
「キス。」
え…と言う間もなく、秋也の唇は信史のそれで塞がれた。
秋也の唇は、女子と同じくらいやわらかかった。
「…いきなり何すんだよ。」
しばらくして唇を離すと、秋也が言った。
「だって、俺のこと好きなんだろ?」
笑いながらそう言うと、秋也は照れながらもうなずく。
「七原、俺とつき合って。」
秋也の目を見てそう言うと、またうなずいてくれた。
* * * *
しばらくそのまま抱き合っていると、5時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。
「あれ? いつの間に…?」
何度かキスもしたけれど。時が経つのは早かった。
「早く行かないと! 次体育じゃん!」
と秋也が言う。あ…。信史は忘れていた。着替えなければならない。
2人で急いで階段を駆け降りた。
* * * *
その日の帰り道。
「シンジ、何かいいことあった?」
「べ、別に何も?」
幼馴染には何か気づかれたようだ。だけど、まだ、隠しておこう。
→後書き