その他テイルズ小説
□犬と猫
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「またここか〜…。」
コンフェイト大森林。マオの得意な地域ではあるのだが、ギルド結成初期からのメンバーであるカイウスは、何度もここには足を運んでいた。
「文句言わない! 依頼なんだから仕方ないでしょ。」
ファラに諭されるも、カイウスはため息をつく。
何度も来た。景色は何も変わらない。最初は綺麗だったと思えた空気も、魔物のせいで汚れているようにさえ感じる。
「ま、じゃあチャッチャと終わらせて帰ろうヨ♪」
「そうだな、俺も何度も狩りに来たから飽きちまったぜ。」
今日のメンバーはカイウス、マオ、リッド、ファラの4人。
依頼の内容はウルフ退治だ。
「もう、二手に分かれてやらないか? ウルフなんて楽勝だろ。」
リッドの提案。全員が賛成し、リッドとファラは別の道へと進んで行った。
「俺達も行こうか。」
「うん。」
カイウスとマオも歩き出す。
既に遠くには数体のウルフが見えていた。
「あれ? こんな所に道なんてあったっけ?」
マオが指差す。確かに…今までもあったのかもしれないが、それは草に隠れていて見えにくかった。
しかし、確かに道である。どこかへ続いているようだ。
「行ってみようヨ!」
「おいおい、俺達依頼中だぜ?」
「まあまあ、あっちにウルフがいっぱいいるかもしれないしネ。」
そう言ってマオは道へ入って行った。
仕方ないな…と思いながらも、俺もマオの後について行った。
しばらく細い道を進むと、広い場所に出た。
そこには、たくさんの花が咲いていて、森林にしては明るく、幻想的な場所だった。
木が少ないために、上からの陽射しがよく入るのだろう。
「綺麗だネ…。」
「ああ、ここにこんな場所があったなんて…。」
ネコやリスなど、色々な小動物もいて、憩いの場となっているようだった。
カイウスたちは花畑に寝転がる。
「癒される〜。」
マオが幸せそうに言う。本当にその通りだ。
花のいい匂いが漂っていて、気持ちがいい。
しばらく寝ていると、マオが甘えるようにカイウスにすり寄って来た。
「なんだよ?」
「ん…好き。」
カイウスは「はあ?」と言って、マオの頭をなでた。
「カイウスも、いい匂いだよネ…。」
襟元に顔を押しつけ、カイウスの匂いを嗅ぐマオ。
カイウスはさっき見たネコのことを思い出して、こう言った。
「マオって、ネコみたいだよな。」
「はあ?」
「こんなに甘えてきて。可愛い。」
頬に触れながらそう言うと、マオは「じゃあカイウスはイヌみたい。」と言った。
獣人化できるカイウスにとっては冗談では済まされないのだが、別に悪い気はしなかった。
まあ、マオ以外に言われたらむかつくだろうけど。
「イヌって、どこらへんがだよ?」
「んー…。何となく。」
しばらくマオは離れようとはしなかった。が、カイウスは依頼中であったことを思い出す。
「そうだ、ウルフ倒しに行かないと。」
「え〜、もうちょっとこうしていたいヨ。」
「ダメダメ、リッド達だって頑張ってるんだから。」
カイウスは起き上がり、マオの手を取って起こした。
不服そうなマオに、一言。
「後で、また来よう?」
そう言うとマオは嬉しそうにうなずき、2人は元来た道へと戻って行った。