その他テイルズ小説

□霊峰での依頼
1ページ/3ページ


「なーティア、俺ヒマなんだけどー。」

バルエンティア号、1階の個室。そこで、ルークがティアに文句を言っていた。

「だったら依頼でも行く? 私もやることがなくて暇だわ。」
「んー、行こうかな。ヒマすぎて死にそーだ。」
「あら、珍しい。」

あまり外には出たがらないルークが依頼…人助けだなんて、相当暇なのだろう。

「誰を誘うの?」
「好きにしろよ。あいつさえいなきゃ誰でもいいぜ。」

あいつ――とは、アッシュのことだろう、恐らく。
だが、ガイとナタリアとジェイドとアニスは生憎既に別の依頼に出かけているのだ。
(さて――どうしようかな。)

アンジュのところに行くと、マオとカイウスがいた。
(!! カイウス――。)
そう、ティアはカイウスの獣人化した姿をずっと見たかったのだ。

「うーん、じゃああと2人ぐらい、誰かいないかな。」

カイウスの声。向こうも2人探しているらしい。
と、なれば。

「ねえ、私とルークも依頼に行こうと思っていたの。一緒に行かない?」
「あ、ティア。」

カイウスが振り返った。マオもそれに気づいてティアの方を見る。

「じゃあ一緒に行こうヨ! その4人ならメンバー的にもちょうどいいし!」

前衛2人、魔法攻撃1人、回復支援1人。
確かにパーティーとしてはいい組み合わせだ。

「そうね。なら、ルークを呼んでくるわ。どの依頼にするの?」
「何でもいいけどさ、これが報酬的にいいんじゃないかって、話してたんだ。」

カイウスの指差した依頼は、霊峰アブソールでの魔物退治だった。

「炎の得意なマオもいるし。どうかなと思うんだけど。」
「いいわ。じゃ、ちょっと待っててね。」

ティアはルークを呼びに部屋に戻った。

* * * *

それから数分後、4人は霊峰アブソールに到着した。

「寒ィ〜〜〜! 殺す気かっつーの!!」
「ホント、こんなに寒いとはな…上着着て来れば良かったよ。」

ルークとカイウスは寒そうだった。ルークはともかくカイウスは薄着なのだ、無理もない。

「なんだってこんなトコ選んだんだよ!」
「この依頼でいいって言ってたじゃない。」
「でもこんなに寒いなんて聞いてねーよ!」

ルークはもう今にも帰ってしまいそうな勢いだった。

「おいお前、そのマフラー貸せよ。」

カイウスのマフラーを見てルークが言う。

「は、はあ!? オレこれがなかったらマジで死んじまうよ! 大体お前の方が厚着じゃねえか!」
「あ? そんなこと聞いてねえんだよ。貸せったら貸せって…。」
「はーいストップストップ!」

険悪な空気になりかけた2人を仲裁したのは、マオだった。

「ボクの炎で温めてあげるヨ、ちちんぷいぷい♪ …ってね。」

マオが手のひらサイズの炎を出した。ルークはありがたそうに近づいたが、

「ダメだ。気休めにもなんねえや。」

と言ってゲンナリしてしまった。
マオは残念そうに炎を消す。

「行きましょ。さっさと片付けた方がいいわ。」
「そうだな。体動かしてた方が良さそうだ。」
「うー…帰りてえ…。」
「まあまあ、ガマンガマン♪」

そしてようやく4人は歩き出した。

三十体程度の魔物を倒したところで、寒さのせいもあってか徐々にみんな疲れが出てきた。
だが、目的の魔物の討伐数はまだ十近く残っていた。
そのため、ティアが休憩を提案した。治癒能力をもってしても、身体の疲労そのものはなかなか取れない。

「ここに座ろうか。」

やや大きめの、平らな岩を見つけ、マオが炎で氷を溶かし、さらに水を蒸発させた。その上に4人で座る。
さらに近くの木を集め、焚き火を作った。

「サンキューな、マオ。」
「ありがとう。助かるわ。」

カイウスとティアはマオに礼を言ったが、ルークはチラッとマオの方を見て、すぐに目をそらした。
それを見てティアがクスッと笑う。

「ねえカイウス、獣人化してみてヨ〜。」

(!?)ティアが反応するも、誰も気づかなかった。

「え? なんで?」
「だって、あったかいじゃない? その方が。」

確かに…とカイウスはうなずき、
(あ――)
興奮するティアの目の前で、その姿を変えた。

「やったー♪ あったかーい!」
「お、おい…。」

ギュッとカイウスに抱きつくマオ。恥ずかしがるカイウス。そしてそれを真っ赤な顔で見ているティア。

「どーしたんだよ、ティア?」

ルークの問いかけにも答えず、ティアはカイウスの手を握った。

「ティ、ティア?」
「ああ、肉球が…! やわらかい…。」
「は?」

戸惑うカイウスに構わず、ティアはマオを押しのけてカイウスに抱きついた。
自然と、15歳のカイウスには少々刺激の強すぎる胸部が身体に密着する。

「お、おいティア!」

そしてなぜか怒るルーク。

「ティア、どうしたんだよ――」
「ああ…この毛並み…感触…可愛い…ふわふわ…。」
「はあ?」

訳が分からない、という顔をするカイウスと、何も聞こえていなさそうなティア。
茫然としていたマオは、ハッとした顔で、

「ちょっと!! 離れてヨ!」

カイウスはボクの――と言いかけて、やめた。ここにはルークもいるのだ。

「おいお前、元に戻れよ。」

ルークの声。カイウスはルークの方を見た。

「そうすればティアは離れると思うぜ。」
「そ、そうだヨ。早く戻ろうヨ。」

それを聞いてカイウスは人間の姿に戻った。
と同時に、ハッとして我に帰るティア。

「ご、ごめんなさい――私――」
「いや、別にいいけど…。」

びっくりしたよ、と言うカイウス。ティアは恥ずかしそうに向こうを向いてしまった。
一方のマオとルークはどこか不機嫌だった。

「もう、早く行こう?」
「そーだよ! こんなトコさっさと帰ろうぜ!」

そして4人は再び魔物退治へと向かった。


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ