□君に惹かれてる
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「柴苑?」








いつもならここで抱きつくような勢いでネズミ!!と言ってくるが今日は

「……あ、なに?」

寝ぼけたような返事。

昨日からこの様子。常にボーっとして上の空で授業中も教科書を何も考えずに見ている。
クラスメイトの沙布が聞いても 大丈夫だ と言う。


「柴苑、なにかあったのか?」

家の中に沈黙が流れる
柴苑とネズミは小さい頃にも一緒に住んでいたがネズミが孤児だと知って、引き取りにきた一族がいた。

ネズミの髪色と目の色と同じ大人がネズミを引き取りにきた。豪華な指輪、大きな車。
柴苑の家には手に入らないようなものばかり。


火藍と一緒に出掛けた時に柴苑は ここがネズミのお家よ と言われて小さいながらにその家の価値・戦力に驚いた





時がすぎ、柴苑は高校生になり地元の高校に進学していた。
特別選抜の中でも一番頭のよい柴苑は、特別待遇で入った。

入学してまもなく
部活に入ろうと思い見学をしていた時だった。廊下の一番端から歌声が聞こえてきた。
自然と足が歌の聞こえる方に走り出す。
優しくてドアをあけると演劇部の練習中だった。 それも構わずにあの歌声を探す。

「……柴…苑?」

舞台の中央に立っていた女性、いや女性役をやっている人を見る。
あの目は……

「ね…ず、み?」


小さい頃、あの目の色が好きで凝視しているとネズミが少し照れたように笑っていた

そうあの目だ。



ここで再会した。


練習が終わり柴苑の家に行き、火藍に報告してから今、どうしているのか聞いた。

「俺今、一人暮らししてんの」

あの家からどうやって一人暮らしをさせてもらえるんだ?
謎がいっぱいだった。だが柴苑は謎よりもネズミに会いたくて、もう離したくなくて


「僕、ネズミと暮らしたい」


と思ったことをその場で打ち明けた。
火藍は、ネズミがいいのなら!と言って断れなくなった状況で了解した。




それから1年。
柴苑は生徒会に入り、毎日忙しそうだ。 なのに、昨日から様子がおかしい。


なんなんだ、と思いながら布団をかぶり少し不安なおもいを飲み込んだ。●●
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