高杉VS土方

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教室の隅。つまらなそうに窓の外を見ていた晋助が、ひらりと窓から忍び込んだイチョウの葉をつまんで指先で弄(もてあそ)んでいる。

昼時が来て、皆は外で母親が作った弁当を食べているというのに、晋助はずっと教室の隅で座ったまま。

晋助は食べないの――?と聞くまでもないのは、彼はそもそも弁当を持って来た事がないからだ。

二人きりの教室。彼に包みをズイと押しつけて、私は外にかけだした。

寺子屋からの帰り道、いつもの道を1人歩いていると、夕日に伸びた影が一つこちらを見ている。

イチョウの木に寄りかかる物憂げな表情。それが晋助なのだと気付くと同時に、彼がゆっくりと私に近づいて来た。

「…どうしたの?」

そう言ってしまうのも無理は無い。だって晋助の家は私の家とは正反対の方向だったからだ。更に言えば、寺子屋に通い出して数ヶ月、帰り道に彼とすれ違った事すら無かった。

いつまでも黙ったままの彼にしびれを切らして、私はまた「どうしたの?」と言って、地面に目を落とす彼の顔を覗き見た。

少しの間があって、晋助が私を見た。

大きな紫色の瞳が少しだけ揺れて、私はただ、彼の言葉を待っていた。
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