君が欲しくてたまらない〜キセキの王子様〜1
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「随分と焦っていたようだな…
…――赤司らしくもない」
「…そうかい?」
近づいて、ベッドに横たわる(名前)を見れば、まだ息が荒い。
「誰かに取られてしまうのが怖いのだろう?」
(名前)の髪をそっと撫でながら、意地悪く赤司に笑いかけると、
「…あぁ。
とても怖いな」
と、苦笑いする赤司。
いつもなら強気な赤司が、こんなにも弱気になるなど。
…ありえん。
「時間だ。(名前)は貰って行くのだよ」
眠ったままの(名前)をベッドから抱き上げ、俺はそそくさと赤司に背中を向けて歩きだした。
「真太郎…――」
消え入りそうな赤司の声に立ち止まり、前を向いたまま「なんだ」と尋(たず)ねると、
「頼むから(名前)を…
泣かせないでくれよ…」
と優しく言う赤司。
「…当たり前だ」
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馬車の中で(名前)を膝枕しつつ、 俺は頬杖をつきながら外の景色を見ていた。
「…あの赤司がな」
恋をすると人は変わると言うが、
赤司の様な極端(きょくたん)な奴も、そうはいないだろう。
それだけ、本気だったと言うのか…?
「貴方は本当に…罪深い」
俺はまた、(名前)の髪を優しく撫でながら微笑んだ。
「その罪。俺が清(きよ)めてやる」