オケアノスの都 ー海神の三叉戟ー

□第5章 二つの恋心
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 昼間だというのに、グンナーの衣服が乱れて素肌が覗き、コメスの手がグンナーのあらぬ箇所へ滑り込み、弄っている。
グンナーが、言葉こそ嫌がるものだがむしろ、コメスの膝に乗り明らかに、甘えているという感じがあった。

(これは!?)

 さすがに、アシュタも驚きしばらく、呆然となる。
だが、すぐに我に返るやウホンと咳払いをすると、中の雰囲気が慌ただしいものとなる。
アシュタは、素知らぬフリをすると足音をわざと大きくさせ、部屋を通り過ぎて行く。
それから、柱の陰に隠れて部屋の様子を窺う。
やがて、中からコメスに伴われてグンナーが、出てくる。

「やはり、執務室で事を行うというのは、いけませんね」
「ならば今宵、我が邸へ来て……」

 と、いちゃいちゃとしているから、見ているアシュタに苛立ちが更に強くなるのだ。
やっと、二人が離れてコメスは元の自身の執務室へ、グンナーは何事もなかった様な澄まし顔で、アシュタの方へ歩いてくる。
そこで、アシュタが柱の陰から飛び出す。

「これは、アシュタ殿」

 グンナーが、アシュタの姿に少し驚きを見せる。

「グンナー、貴様に話がある!」

 そう言うや、グンナーの腕を掴むとグイグイと引っ張って、庁舎の裏手にある水路に直接通じる入り口付近へ来るや、グンナーへ怒りを隠さず言うのだ。

「コメス将軍の男色趣味自体にも、苦々しく思っていたがあろう事か、お前もだとはな!」
「何ですか。急に」
「惚けるな! そのコメス将軍へ色仕掛けをかけ、庁舎内で真っ昼間だというのに……」

 グンナーは、まさかアシュタに見られてしまうとは思わなかった。
だが、アシュタの言葉を受けて、グンナー自身の持つジレンマを話す気もないから。

「いいじゃないですか。そういったのは、人それぞれですし」
「黙れ! 大体、コメス将軍は強硬派に肩入れしている者だ。今回の暗殺の件だって、関わっている可能性も」
「憶測で物を言わない方がいいかと」

 アシュタの非難を、まともに受け取る素振りはなく、グンナーがアシュタから離れようとした。
が、アシュタはグッとグンナーの左の手首を掴み、握りしめながら。

「このエスト被れの。青びょうたん顔が!」

 思わず、グンナーへ悪態をつく。
これを聞いたグンナーが、眉をひそめるので、彼がムッとなったのだとわかる。
しかし、アシュタの中で謝る気などなかった。

「お前の性根を、叩き直してやる!」
「お断りしておきます」

 と、グンナーがアシュタの腕を払い除ける。
だが、アシュタも頑として譲らず、グンナーの胸ぐら掴み詰め寄った。


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