クルースニクの聖戦

□Act.6
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 荘厳な石造りの礼拝堂のすぐ側にある、古い木製の時計塔がある建物は学園では、講堂として利用されているが現在は、夜だからシンッと静まり返っている。
だが、中では怪しげな者たちが集まっていた。

「右にフォレグ、左にオフィエル、前にハギト、後ろにベトール……」

 集まっていた者たちは皆、揃いの黒色のローブを纏っており、頭までフードを被り容姿はわからない。
照明となる光源は、電灯のそれではなくて火によるものだ。
まるで、そこは中世時代の魔術師たちの集いに感じる。

「我らの偉大なる主よ。どうぞ、我らをお守りください」

 この様子を、物陰から見つめている者の影があったが、しばらくしてサッと立ち去る。
しかし、儀式にいる者たちは誰もが、その存在を気づかなかったのだ。


 聖エリザ学園は、山側にある台地に建つ学園で、送迎車の窓から宵ノ宮市の街並みが一望できた。

「思っていたより、山の方に学園がありますね」
「えぇ。だからと、不便な所じゃありませんが」

 送迎車の運転手が、そう返す。
確かに、台地へ入ると住宅地が並び、お洒落な店などもそれなりにある。
ここは、宵ノ宮でも高級住宅地として有名で知られていたが、音桐 狗璃須は初めて目にした。

(しかし、まぁ……都合よく神父職が空いていたよな)

 もしかすると、セサルたちの内部工作かもしれないが、だからと今更になって嫌だとは言えない。
やがて、広大な敷地を塀で囲まれた白い建物が見えてくる。

「あれが、聖エリザ学園ですか?」
「そうです」

 塀と中世の宮殿を模した造りで、学校というよりも音桐には要塞の様に思えてしまう。
校門も、警備員がいて厳重な様子に尚更だった。
それを、横目に見ながら送迎車は学園の正面ではなくて、職員用の入り口で止まる。

「音桐神父、こちらに」

 と、学園から出迎えたのは先に潜入していた、シスターに化けた華恵であった。

「゙初めましで、今日づけで学園専属と音桐です」
「えぇ、よろしくです」

 知り合いであるが、初対面を装い華恵へにこやかに挨拶する。
外面がいいが、内面では音桐は気が重い。

(やはり、伯母さんがいるし……やり難い)

 見えない所でため息を吐き出す。
今は、10時を過ぎた辺りだから授業中とあって、静かなものだ。
途中、廊下から教室の様子が見えて、真面目に勉強する女子生徒たちに、つい琉依と比べてしまう。

「ミッション系の学園ながら、都合により専属の神父様が居らず、困ってましたが。いやはや、助かります」

 そう言うのは、学園を管理し運営する役員だ。
聖エリザ学園は、有数の進学校であり高級住宅地に学園を構えたとあって、お嬢様学校として有名であった。
広大な敷地には、この校舎を始めとして寮や礼拝堂といった建物が並ぶ。


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