クルースニクの聖戦

□Act.3
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 宵ノ宮市の繁華街にある雑居ビルの一角に、大神 朔(おおがみ さく)と言うジャーナリストの事務所兼住宅があった。
ただでさえ、胡散臭そうな感じのビルだけに、訪れた尾上 斉瑛(おがみ なりあき)は、中へ入るのを躊躇っている。

「ここなのは……確かなんだけど」

 斉瑛の手に週刊誌と、ここの住所の書かれたメモがあった。
この週刊誌を出していた出版社に問い合わせて、とある記事を書いた記者が誰かと聞き、この住所を教えられたのだ。

(やっぱり、止めておこうかな。……でも)

 そう、ビルの前でウロウロとしながら悩んでいると、階段から話し声が聞こえきたので、はっとなり斉瑛は慌てて近くの自販機に身を隠す。
ビルから、短く切った髪に革ジャンに黒のジーンズを着込んだ男と共に、もう一人男の姿を見るなり斉瑛が驚く。

「あれ……って」

 黒い祭服に、十字架を下げている神父で、その神父は斉瑛が通う摩羯高等学校のカウンセラーとしている、音桐 狗璃須だった。
音桐は、ビルの前で男と話しているが、雰囲気から知り合いの様で親しい様子が見える。
やがて、音桐が男と別れると男は再びビルへ戻って行くけれど、斉瑛は音桐のが気になり後をつけた。

(男と何を話していたのか……)

 そう考えながら、音桐の後ろを歩く。
繁華街なので、斉瑛の他にも歩く人がいたから、音桐が振り返る事なく気づかず、そのまま住居である教会へ帰る。

(神父だから、教会にいるのは当然だけど)

 あまり入り慣れない建物だけに、斉瑛は戸惑いながら呆然と教会を眺めていた。

「えっ!? 尾上じゃない。どうしたの?」

 と、その声を聞いて、振り返ると斉瑛は目を丸くする。
同じクラスの諸羽 琉依がいたからだ。

「諸羽こそ、何で……」
「うん……まぁ、ほら。ご……じゃない。神父にちょっと相談乗ってもらうと思ってさ」
「そうなんだ」
「尾上もなの? だったら、一緒に行こう」

 そう言うや、琉依が促すものだからあれよあれよと、教会の中へ入ってしまう。

(相談じゃないけど、まぁいいか)

 琉依が慣れた様子で入って行くから、斉瑛は目を白黒していると。

「神父〜〜」

 礼拝場を抜け、奥にいると思われる音桐を呼ぶ。
すると、いきなり琉依は後ろから誰かに抱きしめられた。

「何だ、琉依か。妙に気配するから誰かと思えば」
「し……神父。今、どこに」
「そこの柱の影だ。で、急に改まって呼んでどうしたんだ」

 そんな事を言いながら、琉依の首を口づけて吸い、さわりと太股辺りを撫でる。
琉依の背中に、ゾクッとしたものが走ってゆく。

「あ……ん。だ……めェ」
「何がダメなんだ。昨日は、やり足りないって言ってたたろ」
「そうじゃ……」

 言い返しかけて、音桐にグイッと顔を向かせられ、キスをされながらモゾモゾと裾から手を差し込んで、肌へと直接触れてきた。


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