タナトスを暴く者
□Prologue
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ベェルノーグの言葉を聞き、妙に納得した顔をする。
「俺も悪かった」
「ううん」
「そうか。恋人の名前と同じか」
これを聞いて、ベェルノーグは大いに反省する。思えば、自分の言った言葉はこの者にとって、怒って当然だと感じた。
「あ……あの、勘違いしてごめんなさい」
「いいって。お前を怒鳴ったところでユーナが蘇る訳ないのによ」
そう言うと、若者は可笑しそうにひとしきり笑ってから。
「俺自身が医者だけに尚更、無力感を覚える」
「お兄ちゃんは、お医者様なの?」
「と、言ってもまだ駆け出しだ。それに、この蔓延のせいで死体のほとんどが火葬されて、原因となる病原体の究明できないでいるしな」
この時のやり取りが、ベェルノーグの運命に転機をもたらす。
そして、これが生者ではなく死者の声に耳を傾ける医師、チェルーロ=ネクロスとの初めての出会いでもあった。