タナトスを暴く者

□Prologue
3ページ/3ページ

 ベェルノーグの言葉を聞き、妙に納得した顔をする。

「俺も悪かった」
「ううん」
「そうか。恋人の名前と同じか」

 これを聞いて、ベェルノーグは大いに反省する。思えば、自分の言った言葉はこの者にとって、怒って当然だと感じた。

「あ……あの、勘違いしてごめんなさい」
「いいって。お前を怒鳴ったところでユーナが蘇る訳ないのによ」

 そう言うと、若者は可笑しそうにひとしきり笑ってから。

「俺自身が医者だけに尚更、無力感を覚える」
「お兄ちゃんは、お医者様なの?」
「と、言ってもまだ駆け出しだ。それに、この蔓延のせいで死体のほとんどが火葬されて、原因となる病原体の究明できないでいるしな」

 この時のやり取りが、ベェルノーグの運命に転機をもたらす。
そして、これが生者ではなく死者の声に耳を傾ける医師、チェルーロ=ネクロスとの初めての出会いでもあった。


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ