補給を念頭に置くからこそ、あの岬に居座っている。
ヴァニス共和国が岬を奪い返そうにも、あそこは陸地から行くのは困難であるし、海からしか行けない。
だからこそ、ジェノヴェアも最初に奪ったのである。
「補給線を叩けば、奴らも手を引かざるおえない。そうなれば、講和にも持ち込みやすいだろうし」
これを聞いた、スクードや他の者は目を丸くする。
一手先どころか戦の終わりまで、ティソーンが考えている事に驚いたのである。
「何を考えて、お前は今まで過ごしていた?」
クルテルの問いかけにティソーンは、笑いながらこう答えた。
「俺はただ、安穏と生きていたいんだよ。それこそ昼灯火としてな」
その答えを聞いて、クルテルが呆れた表情を浮かべたが、ティソーンは構う事なく。
「だから、クルテル。お前を頼りにしている。その負けん気の強さを敵にぶつけて、圧倒してくれよ」
片目を瞑り、クルテルへ言ってやる。
彼は、はぁとため息を漏らす。
「簡単に言ってくれる。が、せいぜい貴様の度肝を抜いた結果を出してやるぞ」
「期待しておくさ」
クルテルの言葉にティソーンは、こう返して笑みを見せたのだ。
彼の実力を、誰よりも評価しているから、こうした表情をティソーンがしている。
「頼んだぞ」
その一言に、クルテルの心は高揚すると共に、目の前の男の持つ魅力に妬ましさを覚えた。
けれど、それはまだ小さな棘にすぎないものであり、小さな違和感を秘めたままクルテルは、頷いたのである。