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□空に降る雪@
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雪の記憶



バルスブルク帝国…七大陸の半分を支配する国の、第一区。バルスブルク要塞によって守られた王室内の廊下を、全速力で走る影があった。
「たたた大変よオオルリ、キクネ!」
呼ばれた女ふたりと、一緒にいた男が振り返ってこちらに向かってくる人を見た。
「どうしたんですか、ギョクラン」
「あんまり廊下を走ると王室家政長官に怒られちゃいますよ〜」
いつも通り淡々としたキクネとふわふわしたオオルリに、ギョクランは慌てた様子でまくし立てる。
「そんなことに構ってられないわ!ああもう、どうしてあの女官はちゃんと仕事をしないのかしら!油断しないようにってちゃんと注意したのに…ちょっとハクレン、聞いてるの!?」
「あ、ああ……あの女官とは、午前中に俺達が別の用件で王女の傍を離れる際、王女のお世話を頼んでおいた者か?」
いきなり話を振られたハクレンは戸惑いながらも話の確認をする。ギョクランは鼻息荒く「そうよ!」と頷いた。
「あの女官、姫様が『側仕えの必要はない。自らの仕事に戻れ』って言われるままに姫様の傍から離れちゃったのよ!おまけに王女は自室を抜け出されて、門兵も姫様をお通してしまったの!」
「姫様は公務に疲れてらしたのかしら…」
何となく話の内容を把握できたオオルリは自らの主のことを思った。王女はまだ十五歳で、毎日の公務の負担も相当のものだろう。
それまで黙っていたキクネは頬に手を当て、息をついた。
「それでは姫様は街に出てしまわれたのですね」
「そう。困ったわ…時間までには見つけださないと」
ギョクランは眉を寄せて廊下の奥を見やった。

「今日は他国の使者がおいでになるのに…」
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