*BLEACH*

□『愛らしくて愛しい人』@狛剣
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はぁ…と小さく溜め息をつき、再び相手に視線を戻す。



すると、 相手はずっと此方を見詰めていたらしく、
思いっきり目が合ってしまった。



「っ…ど、どうした、更木…」



「んー?…いやぁ…」



未だに此方を見詰めながら、ポツリと一言だけ返される。



ここまで凝視されると、なんと言うか、居心地が悪い。



「…い、言いたい事があるなら、はっきり言わんか。」



「…耳……」



「えっ…?」



「だから、耳。」



「み、耳…?」



「うん…耳、触らせろ。」



コクンと頷き、人にものを頼むとは思えん態度で、
想像もしなかった事を言われた。



いったい、何処からそういう考えに辿り着いたのだろうか…?



儂の頭上に疑問符が浮かぶ。



そんな事はお構いなしに、更木は座った状態のまま、
目一杯腕を伸ばしてなんとか耳に触ろうとしていた。



そんな相手の姿は、また格別に愛らしい…





「分かった分かった…ほら、これで良いのだろう?」



儂は頭を下げ、相手の手が届くところに持って行ってやる。



「あっ……」



更木は多少驚いた様子で、恐る恐る耳に触れてきた。



慣れない感覚にピクリと耳が動く。



その瞬間、更木がふわりと表情を緩ませた。



「すげぇ、ふわふわしてる…柔らけぇし…それに、動いた…」



嬉しそうに、指先で何度も触れたり撫でたりしてくる。



その表情は、まるで幼い子供のよう。



あぁ…やはり愛らしい…



自らの気持ちを堪えきれずに、儂は相手を抱き締めた。





「んっ…狛村…//」



急な展開についていけない更木。



頬を染めて、もぞもぞと儂の腕から抜け出そうとする。



勿論、そんな事をさせる訳はないが。




「剣八…やはり貴公は愛らしい…」



「テメッ、またそれを…//」



「仕方なかろう…貴公は、儂の恋人なのだ。」



「っ…そ、だけど…//」



顔を隠したいのか、儂の首筋に額を押し当ててきた。



無意識とは、時に恐ろしい…



こういった行動が余計に愛らしさを感じさせているのに、気付いていないのか?



鈍感…いや、天然…?



どちらにせよ、やはりこの男は愛らしい…





儂はクスリと微笑を浮かべ、更に強く相手を抱き締める。



「狛村…//」



「…愛しているぞ、剣八…貴公は儂の全て…
貴公なしでは生きては行けぬ…」



「っ…//」



「このまま、いつまでも儂の傍にいてくれ…」



耳元で囁いてやると、頬を染めていた赤が広がり、
耳までもを染め上げた。



そして小さく頷いたかと思えば、儂の背に
腕を回して抱きついてくる。



(まったく…こやつはいったい、どこまで愛らしいのか…)



儂は照れて顔中を真っ赤にしている相手の頭をそっと撫でてやり、
頬に触れるだけの口付けをした。



驚き、顔を上げる更木。



あぁ…この美しく、何よりも愛しい、我が恋人…



儂は相手を壊さぬよう、静かに口付けを交わした…












惚れとは時に恐ろしい…



愛した者以外、何も見えなくなる。



しかし、それでも良いと思うのは



自らの惚れたその相手が



愛らしくて愛しい人だから…
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