*BLEACH*

□『僕しか知らない』@京剣
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十一番隊隊舎。



霊圧の位置からして、彼はここにいるらしい。



僕は入り口の前に立っている隊員に軽く挨拶だけして中に入る。



再び霊圧を探って彼のいる場所へと歩いていくと、
稽古場の前に辿り着いた。



中から感じる霊圧は一つだけ…
という事は、一人で稽古をしているのか…



そんな事を考えながら、扉に手を掛け中に入る。



そして入った先には、僕が探していた人物が、
汗を流しながら刀を振るっていた。



相手はまだ、僕には気付いていない。



(やっぱり、綺麗だなぁ……)



彼は稽古をしている時、とても凛とした表情をしている。



その姿は何よりも美しく、普段彼の事をよく見ている
僕でさえ、目を奪われてしまう。



相手の稽古が一段落したところで、僕は彼に近付いた。



「今日も頑張ってるね、剣八君。」



「…何しに来た。」



笑顔で近付く僕に、彼は眉間にシワを寄せて嫌そうに言い放つ。



「相変わらずつれないなぁ…君に会いに来たんじゃないか。」



「毎日毎日、よく飽きずに来れるな。」



「君が好きだからだよ。」



「こっぱずかしい事をさらっと言うんじゃねぇ…」



そんな他愛もない会話を2つ3つ交え、それから
僕は彼に少し休憩する事を勧めた。



「休憩だぁ?んなもん必要ねぇよ。」



「でもねぇ、少しは体を休めないと。
ずっとやりっぱなしってのも、良くないんだよ?」



「チッ…へぃへぃ、分かったよ。休みゃ良いんだろ、休みゃ。」



ブーブー文句を言いながらも、彼は稽古場の端に寄って腰を下ろす。



こういう素直じゃないところが、皆は知らない彼の可愛さ。



なんだか嬉しくて、一段と表情が緩む。





「おい…お前、すげぇ顔してんぞ?」



「そうかい?まぁ、気にしない、気にしない。」



「はぁ?…お前、相変わらず訳分かんねぇ。」



僕の言葉に彼が苦笑する。



やっぱり可愛いなぁなどと思いつつ、僕は彼の隣に腰を下ろした。



ふぅと一息つく彼の横顔をじっと見つめ、
何を話そうかと頭を回転させる。



しかし、脳内には先程の事しか出てこず、それが悲しくて、
ついさっきまで緩んでいた表情が次第に暗くなっていく。



そんな僕に気付いたのか、不思議そうに
首を傾げながら、彼が顔を覗き込んできた。



「京楽…どうかしたのか?」



「あ、いや…さっきまた、七緒ちゃんに怒られちゃってねぇ…」



つい、いつもの癖で話を誤魔化してしまう。



そんなもの、彼に対してはなんの意味もない事は分かっているのに…



「お前…いい加減その癖直せよ。」



「っ…そうだね…ごめんよ…」



「謝んな…別に俺は、お前を責めてる訳じゃねぇんだ。
ただ、お前は俺に何も言わねぇ…だから…結構、不安なんだよ…」



彼の言う通り、僕は誰に対しても、自分の事をほとんど話さない。



恋人である彼に対してはとくにだ。



心配を掛けたくないし、嫌な想いもさせたくない…
そう思って、僕はずっと何も言わないで来た…



でもそれが、逆に彼を不安にさせていたなんて、思いもしなかった…
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