*BLEACH*

□『髪は心の同調先』@一剣
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春も始まったばかりのある日。



久し振りに尸魂界へ遊びに来た俺。



いや、別にただ遊びに来た訳じゃねぇんだけどよ…





俺は春になって、無性に会いたくなった奴がいた。



どうしても会いたくて、わざわざ浦原さんに頼み込んで
こっちに来させてもらったくらいだ。



まったく…たった一人に会いたいだけで
ここまでするなんて、俺は女か?



こんなん、大の男がする事じゃねぇ…



でも、そんな事どうでも良いくらい、
俺はあいつに惚れてて、会いたいと思う。



恋愛って怖ぇなぁ…





尸魂界に着いてすぐ、俺はある場所に向かった。



《十一番隊隊舎》



そこに、今回目当ての人物がいる。



そいつはその隊の隊長で、普段なら稽古場か
裏庭辺りで隊員と稽古をしてるんだが…



今日は珍しく、部屋にいるらしい。





相手がいるであろう部屋の扉の前。



俺は大きく一回深呼吸をし、扉を開けて中に入った。



「よぉ、剣八…いる、か…あれ?」



部屋を見回すが、目当ての人物の姿が見えない。



(おかしいな…確かにここから、あいつの霊圧を感じたのに…)



俺は小さく首を傾げ、他も探してみるかと部屋を出ようとする。



すると、微かではあったが、室内からカタリと物音がした。



再び振り返るが、やはり誰もいない…



(…ネズミでも居んのか?)



我ながらしょーもない考え。



その時、ふと、部屋の中央にあるソファーが目に入った。



それは背もたれの方がこちらを向いていて、ここの副隊長の
やちるなんかが座っていたら、多分一目では分からない。



(けど、やちるが俺の霊圧に気付かない訳がねぇし…
第一、俺さっき声掛けたもんな…)



色々と考えを巡らせながら、ソファーに近付く。



そして、上からそっと覗き込み…



「…剣八……」



目当ての人物を見つけた。



そいつはソファーを目一杯使って横になり、
すやすやと気持ちよさそうに眠っている。



「なんだ、寝てんのか…ったく、分かりにくいな…」



俺はブツブツ文句を言いながら、ソファーの
相手が眠る側へと移動し、不良座りをする。



目の前には、ずっと会いたかった人の寝顔…



起こして文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、
熟睡してるみたいだし、こんな可愛い寝顔滅多に
見れないから、そのままにしておく事にした。



柔らかくて、落ち着いた表情…



(なんだよ…俺が居なくても、幸せそうじゃねぇか…)





なんか、ムカつく…



俺がいてもいなくても、そう変わらねぇって事かよ。



はぁ…と大きく溜め息をつく。



すると、その風で剣八の髪がサラリと靡いた。



「あ…すげぇ…こいつの髪、以外と軽いんだな…」



多少驚きながら、そっと相手の髪に触れる。



ふわっとしていて、触り心地が良い…



(へぇ…意外と柔らけぇんだな…)



何度か相手の髪に指を通し、最後にチュッと髪にキスをして手を離した。



髪がサラリと相手の肩に落ちる。



(やっべぇ…なんか、すげぇ幸せ…//)



この静かな空間に、大好きな人と二人きり。



可愛くて、綺麗な寝顔が、すぐ傍にある…



俺はつい出来心で、相手の唇にキスをしてしまった。



その瞬間、目の前の目がパチリと開かれる。





「…あっ……」



「…何してんだ、テメェ……」



完全に目覚めた剣八が、物凄い剣幕でこっちを睨んでくる。



「い、いや…えっと…だから……」



マズい、本気でマズい…!



俺は相手の勢いに動く事が出来ず、ただただ冷や汗を流すしかなかった。



「一護…テメェ、この俺の寝込み襲うたぁ、
良い度胸だな…あぁん?」



そう言いながら、怪しくニヤリと口端を上げる。



そして次の瞬間、起き上がり際に素早く
俺の髪の毛を掴んで引っ張ってきた。





「イテテテッ!!ば、剣八っ、やめっ!!」



「んだコラ、お前自分が悪ぃんだろ?」



「い、いや…確かに、そうなんだけどよ…って、
アダダダッ!!抜ける抜ける、禿げるって!!」



「禿げねぇよバーカ。例え禿げたとしても、
テメェみてぇな変態ならすぐ生えてくんだろ。」



冷たい視線が俺の後頭部に突き刺さる。



「あ、いや、その…本当、悪かったって…!」



「謝ろうって誠意が見えねぇなぁ?」




グイッ




「痛ぇ痛ぇ痛ぇ!いや、ホントすみません、
マジで、ホントごめんなさいっ!!」



「チッ…しゃあねぇなぁ、許してやるよ。」



パッと髪を離され、俺は床に落とされた。
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