*BLEACH*

□『君の匂い〜一護編〜』@一剣
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久し振りに降り立った現世。



そこで俺が真っ先に向かったのは、
俺の恋人がいるはずの病院だった。



別に、怪我やら病気やらで、そいつが
その病院に入院してるとかって訳じゃない。



そいつは、そこの院長の息子なのだ。



その病院の名は、黒崎医院。



そして、そこの倅で、俺の恋人である男…



その男の名前は、黒崎一護だ。





「一護、いるかー?」



俺は自室に入るように、なんの遠慮もなく窓から一護の部屋に入る。



しかし、そこに一護の姿はなかった。



学校が終わって、すぐに遊びに行ってしまったのだろう…



室内には、乱暴に脱ぎ捨てられた制服が、
ベッドの上に広がっているだけだった。



「なんだ、留守かよ…つまんねぇな……」



俺は眉間に皺を寄せ、はぁ…と溜め息をついて一護のベッドに座る。



せっかく久し振りに会いに来たってのに、間の悪い奴…



一護に対する文句をウダウダと考えながら
ボーッとしていると、突然部屋の扉が開いた。



「っ…!?」



驚いて扉の方に目をやると、そこには一護の親父が白衣姿で立っていた。



「よぉ、剣八君。久し振りー。」



「オッサン…ったく、驚かすなよな…」



「ハハハッ…すまん、すまん。いやなに、休憩してたら、
上の部屋から君の霊圧を感じたもんでな?ちょーっと様子を見に来たんだ。」



「そうかよ…つかオッサン、テメェ毎度毎度見に来んじゃねぇよ…」



このオッサンは俺が一護の部屋に来ると、必ず様子を見に顔を出す。



そして、「嫁が来たな?」だの「明日の事も考えろよ?」だの、
余計な事を言うだけ言って、さっさと出て行っちまう。



正直面倒くせぇから、止めてほしかった。



「剣八君…未来の義父に、そんな口きくもんじゃないぞ!」



「テメェが言うな、このクソジジィ!」



「なんだと、このバカ義息子!義父さんは
お前をそんな子に育てた覚えはないぞ!」



「育ててもらった覚えもねぇよ!」



珍しくオッサンと馬鹿な言い合いが続く。



そのうちに二人とも疲れてきて、ついにお互いに言い合うのを止めた。



ぜぇぜぇと、荒い呼吸音が部屋に広がる。



「ハァ…ハァ…おい、オッサン…」



「フゥ…なんだい、剣八君?」



「…あいつ、今日…どれくらいに帰ってくる…?」



「あいつ?…あぁ、一護の事か。そうだなぁ…
夜までには帰ってくると思うが…」



「…そうか……」



オッサンの言葉に、俯きながらぽつりと呟く。



「…まぁ、そう暗い顔しなさんな。あいつが帰って来るまで、
ゆっくりしてたら良い。」



そう言ってオッサンは俺の髪をグシャグシャと撫で、
気を遣ったのか部屋から出て行った。





「……。」



再び無音になる部屋。



「はぁ……」



大きな溜め息が漏れる。



あいつ、夜まで帰って来ねぇのか…



せっかく、会いに来たのによ…



グッと唇を噛み締める。



なんか、自分ばっかり相手に会いたいみたいで、悔しかった。



別に、あいつが狙って出掛けた訳じゃねぇってのは分かってる。



分かっちゃいるが、やっぱり悔しくて…ムカついて…
だんだん、泣きそうになってきた。



「一護の…馬鹿っ……」



涙が出そうなのを誤魔化すように、
俺はあいつのベッドにボフッと横になった。



その瞬間、ふわりと大好きな匂いに包まれる。



「んっ…あいつの、匂い……」



俺はシーツをギュッと掴み、枕に顔を埋めて息を吸い込んだ。



やはり、大好きな人の匂いがする…



(あー…やっぱ落ち着く…傍にいる訳じゃねぇのに、
抱き締められてるみてぇ…)



なんだか、安心した。



離れてても、あいつが傍にいてくれてるみたいで…



「一、護……」



俺はあいつの名前を呟き、目を閉じる。



そして、安心したせいかは分からねぇが、そのまま眠り込んでしまった。



まさか、その直後に一護が帰ってきたとは知らずに…
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