*BLEACH*

□『恋愛型狂犬病にご注意を』@狛剣
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慣れない事はやるもんじゃねぇ。



久々の書類仕事に、俺は心身共に疲れ果てていた。



元々じっとしている事が苦手な俺が、3時間以上も
机に向かいっぱなしだったんだから、当然と言えば当然であるが。



「だー、くっそ…頭痛ぇ……」



グシャグシャと片手で頭を掻き、はぁと溜め息をついて
椅子の背もたれに寄りかかる。



朝から山本の爺に仕事しろとどやされたせいで、
普段のように髪をセットする事も出来なかった。



それどころか、一息つく暇すらも与えてもらえねぇ。



「剣ちゃん、お疲れだねぇ〜」



「あん?…なんだ、やちるか。」



幼い女の声が聞こえたと思えば、いつの間に背中に
くっついていたのか、やちるがひょこっと肩の辺りから顔を出した。



「ねぇねぇ、この書類どうするの?」



「あぁ?…全部目は通し終わったから、あとは爺んとこに出しに行くだけだ。」



「ふぅん…こまむーのとこには行かないの?」



やちるのこまむーという単語にピクリと反応してしまう。



こまむーってのはやちるが付けたあだなで、実際の名は狛村左陣。



七番隊の隊長で、俺とは正反対な真面目な奴。



何故やちるが、そんな奴の所には行かないのかと聞いてきたのか…



それは、俺とあいつが普通の関係じゃねぇからだ。





単刀直入に言うと、俺達は付き合ってる。



つまり、恋人同士ってやつだ。



どういう経緯でそうなったかは忘れたが、ある時向こうから告白された。



『儂を、貴公の隣に置いてはくれぬか…』



なんて、変に改まった言い方で。



まぁ、そん時には俺も奴に好意を抱いてたし、改まっちゃいたが
告白も嫌じゃなかったんで、すんなり承諾した。



それからは、暇がありゃお互いに隊舎を行き来する事が多くなり、
非番の時は一日中どっちかの自室で過ごすようになった。



だが、だからと言ってそこまで進んだ事をしてる訳じゃねぇ。



縁側で昼寝したり、二人で茶飲んで色々話したり、良くても手を繋ぐくらい。



キスとかそれ以上は、まだした事がない。



何かが嫌だからとか、別にそういう理由がある訳じゃねぇが、
何故か俺がそれを受け付けない。



あいつはそれを分かってるから、無理にしようとはしないでくれる。



ただ、相当我慢しているようだから、あいつには申し訳ないな。





「あー…本当なら行くつもりだったんだがな…今から爺んとこ行って
書類確認してもらってそれからだと、殆ど時間無くなっちまうんだよ…」



「そっかぁ…じゃあ、あたしがおじぃちゃんのとこ持ってってあげるよ!」



「…はぁ?」



「だって、そしたら剣ちゃん、こまむーのとこ行けるでしょ?」



「なっ…べ、別に、俺は行きたいなんて…//」



「嘘つかないの!剣ちゃん、嘘下手くそなんだから。」



「うっ……//」



図星を突かれ、何も言えなくなる。





確かに、狛村には会いたい。



今日奴は非番だから、多少なりともゆっくり出来るし。



本当なら、やちるの言葉に甘えて後を任せちまいたいんだが…
心配が一つ。



「お前…これ全部一人で持ってけんのかよ。」



書類は積み上げた状態で約2m。



どう見てもやちる一人では運べない量だ。



「だいじょーぶ!つるりんとゆみちーにも手伝ってもらうから!」



…その手があったか。



「なる程な…なら、頼んじまうか…」



「オッケー!剣ちゃんはこまむーとゆっくりして来て!」



「あぁ、悪いな…んじゃ、頼んだぜ。」



それだけ言って、やちるの頭を撫でてから、俺は隊舎を出た。



あいつは、俺を待っているだろうかと、多少不安になりながら…
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