*BLEACH*

□『僕しか知らない』@京剣
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「隊長って、よくあの人と付き合ってられますよね。」



静かな夕暮れ時。



ボーッと窓の外の夕日を見ていた僕に、
一人の隊員が声を掛けてきた。



「んー?あの人って?」



「更木隊長ですよ。隊長の恋人なんですよね?」



相手の言いたい事は、なんとなく予想がつく。



聞きたくなかったから、あえて分からないフリをしたのに…



僕は仕方なく、隊員に目を向ける。



「そうだけど…どうしてだい?」



「どうしてって…普通無理ですよ。あんな恐ろしくて、
理不尽で、自分勝手な人…」



僕は深く溜め息をつく。



目の前の彼は、何も分かっていない。



それは、彼が今話題になっている人物と
恋仲な訳ではないから、仕方ないかもしれない。



だからといって、その恋人の前で思った事を直接口にするのは、
決して良い事じゃない。



そう思うと、普段穏便な僕でも腹が立った。



僕はガタリと椅子から立ち上がり、部屋の出入り口へと向かう。



「隊長…どうかされたんですか?」



「君ねぇ……」



「あ、はい…なんでしょう?」



「次僕の前で彼を否定するような発言したら…
この隊にはいられないと思った方が良いよ。」



彼を見る事なく、普段よりも低い声でそう言い放ち、
僕は隊舎から離れた。





適当にフラフラと歩いていると、さっきの
隊員の言葉が頭に浮かんでくる。



『普通無理ですよ。あんな恐ろしくて、理不尽で、自分勝手な人…』



脳内でループするそれに小さく眉をしかめ、足元に視線を落とす。



(どうしてこう、毎日毎日同じような話しを聞かなければ
ならないんだろうか…彼は、周りが言うほど酷い人間じゃないのに…)



確かに、彼は戦い好きで、強ければ仲間だろうと
平気で切りかかってくる。



でも、それはただの表面上。



周りが知らないだけで、本当は噂ほど怖くないし…
どちらかと言えば心は弱くて、人一倍仲間想いなところがある子なんだ。



なのに周りは、それを知ろうともせずに表面上だけで決め付ける。



「はぁ…テンション下がるなぁ……」



大きく溜め息を吐き出し、ポツリと呟く。



心に、何かモヤモヤとした物が込み上げてきた。



こんな時は、いつも以上に彼に会いたくなる。



(忙しい、かな…でも……)



一瞬迷ったが、結局僕は彼の所に行く事にした。
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