hp Dream Novel

□ドラコ哀夢/さよならの言葉
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パンッ!

バンッ

バチチッ!


呪文がぶつかり合う音。
呪文が壁に当たる音。

いろんな音が混ざりあって廊下に響き渡る。


ドラコがジルに杖を振り、
ジルもドラコに杖を振る。


ドラコがこうなることは薄々わかっていた。
だって、ドラコの父母は例のあの人の部下、デス・イーターなんだから。

ドラコが従わなければいけないことなんてわかっていた。
たとえ純粋な心を持っていたとしても。


ジルは例のあの人を恨む人間。
ドラコは例のあの人を敬わなければいけない人間。

もともと、出会っちゃいけない2人だったんだ。
なのに運命に反して2人は出会った。


バチッ

パンッ!


いつかはお互い、離れ離れになるとわかっていたのに。
いつかはお互い、敵同士になるとわかっていたのに。


認められることのない恋。

これは、命がけなんだ。


「・・・っ!」


ドラコが放った呪文がジルに命中した。

ジルは床に倒れ、杖はカラカラと音を立ててその横に転がった。


「・・・・、ドラ…コ」


ジルは震える手を床について顔を上げた。
目は、こちらに杖を向け、今まさにとどめを刺そうとしているドラコをしっかりと捕らえた。


「・・・・・。」


1歩1歩とドラコは近づく。
そんな彼にジルは小さく微笑んだ。


「何で笑ってるんだ…」


ドラコは眉間にしわを寄せ、険しい表情をしてジルに杖を向ける。


「僕に杖を向けろよ!最低だ、って言って許されざる呪文でも何でも唱えればいい!」


そう怒鳴るドラコの瞳は、さっき以上に揺れていた。

ドラコ・・・泣いてるの?


「そんなこと出来ない」

「何で!・・・・何で・・・っ」


ドラコは歯をぎりっと噛み締めた。目からは1筋の涙が伝う。


「…お願いだから、僕を突き放してくれ。大嫌いだって言ってくれ。」


弱弱しい声。さっきの声とは段違いの差だ。

こんなドラコを見るのは初めてだった。


いつもこんな風に涙を流していたの?
…さっきのは…わざと…


「…好きよ、ドラコ」


ジルはふらふらと立ち上がり、ドラコに1歩1歩近づいていった。
しかし、さっきとは違い、ドラコはジルに杖を向けようとはしない。

涙を溜めた目で懸命にこちらを見ているだけだ。


「好き…」


ジルはドラコの首に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
もう突き放したりするようなことはなく、小刻みに身体を震わせてるだけだ。


「・・・・ジル・・・!」


ドラコは杖を床に落とし、ジルの身体を力強く抱きしめた。
同時に、ジルの頬にも涙が伝った。


「すまない…ジル、すまない…」

ジルはただ顔を横に振ることしか出来なかった。
ドラコは優しくジルの身体を撫でると、またぎゅっとジルを抱きしめた。



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