hp Dream Novel

□ドラコ哀夢/さよならの言葉
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「もう僕に関わるな」


誰もいない廊下。

ある日突然、何の前触れもなく言われた言葉だった。

ジルは冗談だと思ったから、笑いながら返した。


「何言ってるの、ドラコ」


しかし、彼の表情は変わることなく、鋭い目つきでこちらを睨んだ。


「君とはもう関わりたくない。わかるだろう?もう終わりだ。」

「…ド、ドラコ…?ちょっと待ってよ!」


ドラコはジルに背を向けると、何の思いもないように歩き出した。


「ドラコ!」


突然の出来事にわけがわからないジルは、咄嗟に追いかけて彼の腕を掴んだ。


「…っドラコ、冗談…でしょう?」


「・・・・・。」


少しの間のあと、ドラコは振り返った。
しかし、


「・・・・っ」


ジルに向けられたのは、ドラコの言葉ではなく……

杖 だった。


「…何、…」


さっきと変わらない目つきで杖を突きつけるドラコ。
杖の先端がジルの喉にぐっと押し付けられた。


「…もう僕に関わるなと言ったろう。闇の帝王は復活なされたんだ。」

「闇の…帝王」


ジルは生まれてすぐに例のあの人に父親を殺された。ジルの父親はマグルで、母親は純血の魔女だった。

例のあの人のことは恨んでも恨み切れない。しかし恐怖心ゆえに何もすることが出来なかった。
だから、"闇の帝王"という名前を聞いた時、胸が打たれるように痛くなった。


わざと落ち着いたように言ったあと、ジルはドラコの頬を撫でた。

ドラコの瞳が揺れた。その一瞬をジルは見逃さなかった。ドラコは咄嗟にジルの手を振り払う。

そうだ、おかしい。
ドラコが人を殺せるわけない。


「…だったら殺せばいいわ、」


これは挑発ではない。

賭けだ。


「早く殺しなさいよ!ドラコ!」

「・・・・・っ」


ジルは杖が喉に食い込んで咽そうになるくらいドラコに詰め寄った。

いつもはジルはこんなことを言わない。
こんなに怒鳴ったりしない。



豹変した彼女に戸惑ったのか、殺せと言われ戸惑ったのかわからないが、ドラコは口を開くのを躊躇っていた。額にじわりと汗がにじんでいる。


「・・・・・。」


何もしてこないことがわかると、ジルはゆっくりとドラコから離れた。

微動だにしないドラコの杖を、静かに取ろうとした。

しかし、


「や、やめろ!」

「っ」


ハッとしたようにドラコは乱暴にジルを突き放し、杖を突きつけた。
ドラコのその姿に、ジルは少し目頭が熱くなるのを感じた。


「もうお前は始末する。」


ドラコが言ったその言葉に、ジルは目をぎゅっと瞑った。
ほんの1時間前までは、笑っていた。手を取り合っていたのに。


「それじゃあ、私もそれなりに抵抗するわ。それくらいいいでしょう?」


ジルはスッと自分の内ポケットから杖を出した。
その瞬間にドラコは武器解除の呪文を放ったが、ジルも同時に同じ呪文を放ち、2つの光は中間で互いにパンっと消え合った。


「…私、まだあなたが好きよ」

「黙れ!」


ドラコは大きな声でジルの言葉を遮る。

そして大きく杖を振った。



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