Dance In The Dark
□#5 Venus Who has a brown HAIR
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土方はなお車を走らせ、沖田は黙って乗っている。ただ二人の間に広がる暗礁はさっきよりも険しいものになっていた。いつもの土方と沖田の不仲ぶりからは想像出来ないほどの、険しい空気。
「………乗り込むんですかぃ?そこに
ニヤケながら言う沖田に対して、土方は不機嫌そうに「んなワケねーだろ」とかぶりを振った。
「……相手分かってんのか。幕府牛耳るくらいの組織なんだぞ」
だから天人とも……という含みを含んだ土方だったが、果たして沖田に伝わったかはわからない。
「俺にはあんまり難しいことはわかんねぇでさあ」
沖田は言ったが、『幕府を牛耳る』のが土方の誇張表現であることくらいは気付いていた。牛耳れるなら倒幕する意味がない。ただこうまで言うのなら、土方自身本当に不快に思っているようだから、この話題にこれ以上ツッコむのは止めにしようと思った直後。
「待ちやがれぇぇえ!!!」
窓を突っ切る怒声。
「!?なんだ……?」
土方は前方を凝視し、沖田は車の窓から身を乗り出し周りをきょろきょろと見渡す。周りの通行人も何事かと目をひそめていた。
「……土方さん!あそこだ!!」
沖田が指差したのは交差点。土方は近くに車を寄せて止め、「行くぞ」と沖田に出るよう言った。
「待ちやがれこのアマ!!人にぶつかっておいて!!」
「さっき謝罪なら致しました!」
「そんなことで済むとでも思ってんのか?あぁ??」
「……!!腕掴まないでください!!!」
沖田が遠目に見たのは、青い服を着た女性を取り囲む数人の浪士めいた男達。……よくみる絵だな、と思いながら二人は歩を進める。
「……アンタ、よく見たら綺麗なツラしてんじゃねえか……ちょっと来てもらおうか」
「……嫌です、用事もありますし」
「んなかったいコト言わないで、楽しいことだから」
女は男達の野蛮で下品な顔、態度を見て思いっきり顔をしかめてはいたが、刺すような彼らの視線に身動きがとれないでいた。なすすべもなく、苦虫を噛み潰したような表情で周りを見渡している。ある者は無関係を決め込み、ある者は助けに行こうとしているものの浪士相手ではどうしていいかわからず、立ち往生している。
「真選組だ!!何をしている!!」
そこへ土方の声が響いた。
「ヤバい!!真選組だ!!」
「逃げろ!!」
そう言い捨て、女を振り落として逃げようとした浪士達の前に立ち塞がったのは、
「何逃げようとしてんですかぃ?……原因はあの女にもある、話をすれば必ずしも罰せられると決まったワケでもねぇのに?」
不敵ににやけている沖田だった。
「……沖田!!」
「構わん!切り抜けろ!!」
そう言って刀を抜く浪士達。
「あーらら。刀抜かなきゃ、まだ言い訳出来たのに」
そう言いながらも、ズンズン距離を詰め、刀を抜きながら笑う。目はおもしろいものを見つけた子供だ。
「おらあぁぁああ!!!」
沖田に向かう浪士達。沖田も更に嗜虐的な顔をつくり抜き身の刀を持って突進していった。
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