Dance In The Dark
□#1 来航者
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「南の謀龍?」
思わず聞き返す。
「───こっちの世界じゃそう呼ばれているらしいぜ」
高杉が返す。
「………本名は?」
疑問に思ったので尋ねてみる。
「さあな。平等な盟約をしたとこにしか言わないらしい。──しかも口止めさせる」
怪しい、と万斉は直感した。
話によれば、"南の謀龍"の一団はすでに幕府内部に緻密に入り込み、数多くの協力者を獲得しているという。
しかもここ最近急激に力をつけ、討幕志士の中でもかなり有名になっているとよく聞く。
それでその名前が一切わからないのはおかしいことである。普通は水面下に出てもおかしくはない。
(それだけ強力な勢力、ということか)
「晋助」
「なんだ」
「侮るなよ」
瞬間。
大気がその機能を停止する。
高杉は振り向き様に万斉をジロッと舐め、言った。
「ご忠告肝に命じますよ、万斉殿」
口角をわずかに痙攣させながら。
そのまま高杉は部屋を後にした。