Dance In The Dark

□#1 来航者
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<鬼兵隊 旗艦内>



 その客が来るというので、船の中は一日の始まりから騒然としていた。




 ……正確には客ではなく、密約を交わしにある志士が来る、ということらしい。



 ……………が。




 奥の間でいつもの派手な着物から落ち着いた藍の着物に着替えていた彼――高杉晋助、鬼兵隊総督――はなんとなく嫌な気分だった。



「……資金繰り、ねぇ………」



 実は、相手の名前はまだ聞いていない。ただ、どこからか情報が洩れたらしく、薄々目星はついている。普通名乗るだろ、と最初は思ったが、どうしても当日にしてほしい、と押し切られた形だ。ここまで失礼な客は当然ながら初めてだ。 




(―――鬼兵隊への巨額融資の代わりに情報をよこせ、か)




彼らはそう言った。
情報の全面共有、すなわち同盟。それのメタファーだった。


(………勝手なことを言うもんだな、奴らは)


 腹が立っていた。
上からの言い方に態度。何から何まで気に喰わなかった。


 帯を締め、羽織を着るとちょうど自分を呼ぶ声がした。

「晋助。入ってもよいでござるか」

「ああ」

入ってきたのは人斬り万斉こと河上万斉。

「よく受ける気になったでござるな」

「何が?」

「得体の知れない交渉を」

晋助はクククッ、と細く笑った。

「フン。話を聞くだけ聞いて――」

「突き放す、か」

「ご明答」

「なるほど。それ相応の態度を取った者にはその態度で返す……おぬしらしいな」

「……それに気になるしな」

「何がでござるか?」

晋助は声をさらに細めて囁いた。


「『南の謀龍』がどんな男なのか」

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