「こんにちは、地獄からやって来ました」
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『セイラ Side』
……あー、緊張する。
中途半端な時期の転校だし。
私、赤塚セイラは今日付けでここ・空座第一高校に転校してきた高校3年の女子です。
そんな私は、校長先生との面会も終え、クラスで越智先生から紹介してもらう所。
まだだけど。廊下に待機中。
空座第一……知り合いもいないし。なんか寂しいなぁ……一人ぼっちで。越智先生は『大丈夫!!気の良い奴らばっかだ!!!』なんて言ってるけど……確かここ、ヤンキーもいるんだよねえ………?
あーー、ダメだダメだ、こんなことばっか考えちゃどんどんテンション下がっちゃう!!
私はむりくり顔を上げ、深呼吸する。
深く肺の底まで空気が充たされると、不思議と心が落ち着いていく気がする。
……………ん?
誰だあれ?
今まで気づかなかった。
私の視線の先にいるのは、一人の男。
でも学ラン着てるから………生徒の人なのかなぁ?
それにしても、背、高いなぁ………
たぶん180は余裕で超えている。彼は単行本を読んでいたから少し背を屈ませていたけど、それでも十分高い。
しかも……白髪??ブリーチしてるのかな?……もしかして地毛?
荷物は足元に置いてある肩掛けボストンバックだけ。体はスラリとスリムで、でも首とかを見ると筋肉質そうなのが分かる。白い綺麗な髪は肩にかかるくらいで男子にしては長い。耳が隠れている位。
本を読んでいるその姿だけでもなんかとても絵になっていて、思わず見つめてて、なんかドキッとした。
すると、突然彼が私の方を向く。
「なんか………用でも?」
思いっきりテンパる私。
「あ、いやいやいや……その……何でもないです!!!!」
手をブンブン振りながらそういう私。彼はふぅん、と言って私から目線を外す。
な、な………
なんかめっちゃカッコイイんですけどぉぉお!!!
な、なにあの丁度いい声の低さ!!そしてあの紫色の目!!ヤバい!!ジャニーズよりフツーにカッコイイ!!!
そんな私の煌めいた(気持ち悪い)視線にいろんな意味でやられたのか、
「………アンタも転校生?」
本をしまって私に話しかけてきた。
「は、はい!赤塚セイラです!よろしくです」
「セイラさんね……OK.覚えた」
「ホントですか!?」
「ああ。下の名前なら」
「ありがとうございます……あ、あなたのお名前は……?」
「俺??俺は………」
「おう、お二人さんお待たせ!!いよいよHR行くぞ!!緊張しなくて大丈夫だからな?」
……そー言われると余計緊張しちゃうんですけど。
対照的に彼は涼しい顔で「わかりました」と言うと、荷物を持ってさっさと待機していた会議室を出てしまった。
「セイラ!!行くぞ!!」
「は、はい!!!」
高鳴る心臓を抑えて、HRに向かう。
彼の表情は、見えなかった。
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