「こんにちは、地獄からやって来ました」
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突然の声。
そして視界がパァッッと急激に明るくなり、何事かと目を開けてしまう。
俺は首だけ動かして声の出所を捜す。
『ココだよ、お兄さん』
声がさっきより近い。
「………テメェ誰だ」
ようやく見えた声の主に威嚇の意味も込めて問う。
『こんにちは、咎人さん。僕には名前ないんだ。……つけていいよ、なんか適当なやつ』
「じゃあポチ」
『首引き千切ってあげようか』
「すんませんでした」
コクトーは少し考え、
「じゃあ……ラファエル」
なんとなくのイメージから取った。大天使の名前だったっけ。
『へぇ、ネーミングセンスは悪くないね』
彼はそう言うと、『ラファエル……』と口の中でゴニョゴニョとその名前を反芻し続ける。
その姿は何だか……ガキみたいで滑稽だった。
ラファエルは全くもって奇妙な奴だ。
センター分けした長めの銀髪に丸く翠の大きな瞳、小さい体、白と金の刺繍が入った長いローブを着てそして性別は……判断不能(まぁモノホンの天使には性別ないけど、元々)。声は幼い少年のようだ。
後ろからは後光がさしている。
すると後ろを向いていたラファエルは、突然ピーン!!と背筋を伸ばし、ブンッと音がするかの勢いと共に振り向いた。
『お兄さん、妹さんに逢いたいの?』
爛々と光るその瞳。
興味津々といった顔でコクトーに聞くラファエル。
「うっさいおまえに関係ねぇ」
見事に突っ放すコクトー。
『いいの?千載一遇のチャンスかもしれないのに……僕天使だから』
「mayじゃなくてmustなら乗るかもなエセ天使」
冗談めいて言ったものの……本音もつい混じる。
『mightじゃん……結構強欲なんだね』
相変わらず呑気な天使。
コクトーは寝っ転がったまま眉間にシワを寄せて言う。
「あのな、いきなり天の上から来た不審人物信用しろっていうほうがムリあるよな、それにお前が俺を助けたところでなんのメリットがあんだよ。おまえソウル・ソサエティ関係者だったら重罪だぞ」
最もなことをひとしきり言う。
すると天使はフッと小さく笑って
『メリットなんてないよ』とサラッと言ってのけた。
「あ?」
『僕にはないけど。僕ヒマなんだ。こんなチカラ持ってても何にもならないし。
更に瞳の輝きが増す。
……だから時たま下界を覗く。気に入った奴を引き上げて僕のお気に入りにする。運がいい奴は現世に行かせる。あと僕はソウル・ソサエティにはなんの関係もない一族だ。ご心配なく』
普通なら狂気くらい宿っていても良さそうなその眼には、しかし純粋な好奇心の光しか宿っていないように見える。
コクトーは内心引きながら、頭を整理した。
「要するに………」
天使は黙って先を促す。
「俺はおめぇの暇つぶしか」
『そ』
「ふざけんな」
コクトーは天使に背を向けた。
人のオモチャになりたい奴がどこにいる。
人の心引っ掻き回してそんなに楽しいか。
『あんたの妹さん、現世に転生してる』
不意にラファエルが言った。
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