Dance In The Dark
□#1 来航者
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《鬼兵隊 旗艦 機船進入ゲートフロア》
ガチャン
(はしけが連結されたな……)
『彼』はぼぉっと、しかしどこか鋭さを光らせる目で自分たちが降りるための階段を連結している作業をしている作業員を見つめていた。
(さて………)
彼は座っていた椅子から立ち上がり、身支度を少し整えた。自分の躯から染み出ているベリーのにおいと髪からのソフトワックスのにおいが意外にマッチしてこの今の何とも形容しがたい気分を紛らわせてくれる。
「■■■様。ご出立のご用意を」
軽く気を紛らわすように。
「おーるらいっ」
軽く返事をして、ドアを開けた。
そこにいるのは、いましがた自分を呼んだ有村。
「『様』なんて気持ち悪い呼び方するとはね」
「あはは……やっぱだめでどすか」
有村は苦笑いして言った。
「………まった■■■さあもえらい人にふっかけたもんどすなぁ」
「…………そうでもないさ」
本当にそう思っていた。
攘夷勢力の中では最も危険視されている鬼兵隊。
実を言えば、彼はかなり緊張していた。
桂の時はうまく丸め込むことができたが、鬼兵隊の、しかもあの『長州の虎』相手となると少しややこしい。
彼は武人でもあり、策略家でもある。
一方、自分は策略家であるかもしれないが、武人ではたぶんない。
(よっぽどうまく滑りこまなければ)
だから彼は、事前に手を打っていた。
かなり前から。
彼の強みは『先を見通す天賦の力』と『根回しの上手さ』と『頭の回転の速さ』なのだ。
卓越したそれらを持った彼だからこそ、一大勢力となったこの軍団をここまで育て上げることができたのだ。