短編小説
□ノアの方舟
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ノアの方舟に何を乗せるか、なんて話を裕翔君が圭人に語ってるのを横目に見ながら、
「俺がノアだったら、知念を乗せるよ」と言うと、知念はキョトンとした顔で俺を見た。
「嬉しいけど」
「けど?」
「滅びちゃいますよね」
まあそりゃそうだけど。そういう現実的な話じゃないだろ?そう思いつつも妥協案を探してみる。
「じゃあ女の子も乗せてもいいけど」
「僕、涼介が子作りするのを黙って見てなきゃいけないの」
「じゃあ俺が降りる」
「涼介は僕がいなくても平気なんだ」
ああ言えばこう言う。
でもこの憎たらしい所も好きなんだよなあ。
チラッと彼を見ると、じっと俺の顔を見て、次の答えをワクワクしながら待っている様子。
「・・・一緒に流されるか」
「それがいいかも」
大洪水が来たら、ずっと手を繋いで一緒に流されよう。なんて、結構破滅的な事を言ってるけど、知念が嬉しそうに笑ってるのでまあいいか。
俺はお前が笑ってたらそれでいいんだ。
【ノアの方舟】おわり
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