短編小説
□小指の片思い
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ドラマの合間、一週間ぶりに涼介に会ったら、ホッとした反面、なんだかちょっとだけ遠く感じた。いつもの涼介の中に、僕の知らない涼介が存在してるみたい。
「さみしかった」と言うと、ちょっと照れたみたいに笑って「久しぶりだな」って。それから「ちょっと痩せたんじゃない?」って。たった一週間なのに、お互いちょっとずつ変わってるのかな。
涼介の左隣にくっついて座ると、一週間ぶりに自分の居場所を見つけたみたいな気がした。
「なんで別々なのかな」
当たり前の事なのに、そうやって拗ねる僕を「今一緒にいるだろ」って宥める涼介は、さみしくないのかな。
涼介の左手を弄びながらぼんやりしてたら、その小指で僕の小指を捕まえて、「次の休みが合ったらどっか行こうか」って指切りしてくれた。
「ずっと繋がってたらいいのにな」
「ん?」
「薬指と小指みたいに」
薬指と小指は根元で繋がって、いつも何をしてても必ず隣にいられる。
「親指と小指は繋がってるのに遠くてなかなか触れ合えないね」
そう言ったら涼介が、「バカ」って言って、僕の右手に自分の左手をぴったり覆いかぶせる。「じゃあ、こうしたら・・・」
「俺の親指とお前の小指は出会えるだろ」って笑った。
涼介の手のひらは冷たくて、しっとりして、僕の手を優しく包み込む。柔らかなその感触を僕はいつまでも手の甲で味わってみる。
また明日から会えないけど、小指の僕は少しだけ、満たされた。
「小指の片思い」おわり
.2012.4.24