短編小説

□夢で会えたら
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「好きだよ知念」


あまりにも涼介がハッキリ言って、僕は鏡を見なくても自分の顔が真っ赤になるのを感じた。

テレビの収録の待ち時間の楽屋での事。
たまたま珍しく静かだった時にその言葉は部屋に響いた。


ソファで寝てる涼介の、寝言。


楽屋にいた誰もがピタッと動きを止めて涼介を見て、その後一斉に僕を見た。

勘弁してよ涼介・・・


ご存知の通り涼介は男の子である。男子、男性、メンズ・・・言い方を変えても僕と同じオトコノコ。


好きだよ

なんて、やめてよね。

・・・嫌じゃないけど。


隣にいた伊野尾ちゃんがニヤニヤして僕を見るので、僕はその腕を思わずつねる。
「仲良し過ぎるのも問題だなあ」なんて薮君にも笑われた。


涼介のバカ。
自分だけ何にも知らずに寝ちゃってさ・・・あとで何かごちそうして貰わなきゃ。


薮くんの笑い声に涼介が目を覚まして、「お前なんの夢見てたんだよ」ってすかさず大ちゃんが訊いた。

「ん、なんか・・・いい夢見てた」

そう言って涼介がチラッと僕の方を見る。思わず僕は目を逸らして聞こえないフリ。

「好きな子でも出てきた?」

「ふふ、まあそんなとこ」

「ほーどんな子?」

「可愛くてちょっとツンデレな・・・」

寝ぼけてるのか天然なのか、大ちゃんの誘導尋問に素直に答えてる。

「つきあってないの?」

「うん、それは無理」

「何でだよ。相手も案外お前の告白待ちかもしんないぜ」

大ちゃんがはりきって問い詰める。

「だめ、本気だから。言っちゃったらもうそばにいられなくなるかもしんないし・・・」

寝起きの鼻にかかった声でそう言う。

別に僕の事ってハッキリ言われてるわけじゃないのに恥ずかしくなって、

「あーもう涼介のバカ!」って大声出したら、涼介がポカンと口を開けて僕を見た。

メンバーは大爆笑。


ホント・・・勘弁して。

でも、もし本気なら・・・ちゃんと起きてる時に言ってよね。




「夢で会えたら」おわり


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