短編小説

□優馬はなんでも知っている
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海外ロケ。

日本のホテルよりなんだか天井は高いし心細くて、3人一緒の部屋で寝る事になったけど、

優馬と涼介が先にベッドに入っちゃったから、必然的に僕が選ぶ感じになってしまった。


ここで涼介のベッドに入ったら、絶対優馬に「ヤッパリな」とか言われちゃうし、優馬のベッドを選ぶしかない。

もぞもぞベッドに入ったら、優馬が僕の顔を見て口をパクパクさせていた。



“ナンデヤネン”


・・・って
多分言ってるんだろうなっていうのはわかったけど、僕は知らん顔。


そしたら優馬が携帯の液晶に文字を打ってぼくに見せる。



<なんでこっちに来たん?>


僕は携帯を奪って打ち返す。


<別にいいじゃん>


<良くないやろ。山田君寂しがるで >


<知らないよそんなの>


<アホやな自分>


<どっちが>


声を出さずに携帯画面でそんなやり取り。



優馬ってさ、たまにしか会わないくせに僕の気持ちを見透かすみたいに言い当ててくる。

なんかちょっとムカつく位に敏感なんだよね。



涼介といる時に、

「いいかげん2人付き合ったらええやん」

っていきなり言い出した時には思わず動揺して

「バッカじゃないの」

って自分でも思わぬデカい声が出ちゃったからね。


やましい事があるわけじゃないんだけど、なんか勘ぐられるとはずかしい。




でも、確かに僕・・・本当は涼介と一緒に寝たいなって思ったよ。

だってさ、普通に2つベッドがあって2人部屋の時はさすがに一緒に寝ようなんて言えないし。

せっかくのチャンス・・・って言ったらおかしいか。

別に変な意味じゃないけど、涼介にくっついてると安らぐんだもん。




そんな事を考えてたら、なんでさっきさりげなく涼介のベッドに入らなかったんだろうって、だんだん後悔してきて寝れなくなっちゃった。




優馬が寝息をたてて熟睡してるのを確認して、こっそり布団から抜け出ると僕は涼介のベッドのそばに行く。



どうしよう。

こっそり潜り込んじゃおうか。



明日起きたら間違いなく2人に「なんで?」って言われるけど、寝ぼけてたのかなぁとか言ってごまかしちゃえばいいじゃん。



でもよく見たら涼介はベッドのかなり端の方にいて潜り込むスペースがない。

当然背中の方は広く空いてるわけだけど、そしたら優馬のベッドの反対側になっちゃうし、さすがに寝ぼけて潜り込んだにしては遠回りだよね?



もう涼介、もうちょっと向こうにつめてよ〜



座り込んで涼介の顔を眺めてたら、いきなりパチっと目が開いた。



涼介と目が合う。
思わずフリーズ。



僕は何事もなかったように、静かに優馬のベッドに戻って布団をかぶると、心臓がバクバクした。



大丈夫大丈夫。



涼介は多分寝ぼけてるから、朝になったら絶対忘れてるはず。




そう言い聞かせて寝た。
それが昨日の夜の事。



今朝、涼介が覚えてた時にはドキッとした。


「夜中に目が覚めたら知念が至近距離で俺の事見てた」

って。


正直あの後グッスリ寝た僕は、涼介に言われるまでうっかり忘れてたんだけど。

「寝ぼけてたのかなあ。涼介の見間違いじゃないの?夢でも見てたんじゃないの」

なんて軽く受け流す。

うん、我ながらさりげなくごまかせた。なんて思ってたのに・・・




あとから優馬が、僕のほうにこっそり近づいて来て、

「だから最初から山田くんの方に行けって言うたやん」

って、笑って耳打ちした。





「優馬はなんでも知っている」おわり



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