短編小説
□おやすみなさい
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「今日こそ語り合わない?」
ベッドの中、向かい合った涼介がそんな事を言いだした。
「なにを?」
「お前のさ、悩みとか聞かせてよ」
涼介は、僕が心の中を全部見せてくれないって思ってるみたい。
そういうのを語り合って、それでやっと心を開いて真の友情が芽生えるんだって。
でも悩みなんて、
そんなの簡単に言えるんだったら、実際のところ悩まないよね。
「別にないよ」
「嘘つけ。お前は知らないと思ってんだろうけど、時々お前がぼんやり何か考えゴトしてんの俺は知ってるよ?」
「そーお?」
わざとらしく、しらばっくれてみる。
「俺はね、知念の事、もっと知りたいの。もっと俺に何でも話して欲しい」
「うん」
「話してくれる?」
「ずっと・・・どうしようって思ってる事ならあるよ」
「何?」
涼介の顔が近づく。
相変わらず可愛い顔してるなあ。
睫毛長い。
人形みたい。
涼介は目が悪いから、こんな至近距離で僕が見つめても、多分そんなに見えてないけどね。
「言ってもいいの?」
「なんでも言ってみ?」
じゃあ言うけど
「僕、涼介の事が好きになっちゃった」
「は、はあい?」
涼介の声が思いっきり裏返る。
動揺しすぎ。
「それが、僕のずっと困ってること」
「ど、どういう意味?」
「どうもこうも、そのまんまの意味。涼介の事が好きなの僕」
「恋してるって事?」
「そういう事」
布団の中で、涼介と足がぶつかった。
「お、お前、よりによってこの状況で言うか?」
「涼介が言えって言ったんじゃん」
「そうだけど。もう〜寝れなくなるだろ!」
そう言って涼介が頭を抱える。
「僕は言えてスッキリしたから寝れるかも」
「おい!」
だって本当の事だもん。
「おやすみ涼介、大好きだよ」
この際、どさくさにまぎれてホッペにチュ。
そしたら涼介は目をシロクロさせて、完全にパニクってた。
明日の朝、
どんな顔してんだろ。
おやすみなさい
僕の大好きなひと。
「おやすみなさい」おわり