長篇小説
□秘密
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間違いなく僕は戸惑っていた。
一人暮らしをはじめたばかりの涼介の家に、気軽な気持ちで来たはずだった。
それがなぜ、こんな事になっているのだろうか、いまいち事態が飲み込めずにいる。
「大丈夫だから」
涼介がそう言って僕の頬にそっと触れる。
大丈夫、と言われて思わず反射的に頷いてしまったけど、よくよく考えると「大丈夫」の使い方絶対間違ってる。
見慣れない金属が、手首に重い。
今、左手と右手を拘束してるのは、よく刑事ドラマなんかで見かけるあれだ。
僕の日常が、非日常へと変わろうとしていた。
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