長篇小説

□僕たちの長い夜
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夜中、ふいに目が覚める。
隣で眠る知念が、ピクンと肩を揺らして震えるように縮こまる。

額にはうっすら汗。
悪い夢を見てるの?

俺は寝てるフリしてそっと抱きしめ、その髪の毛に唇を埋める。

安心して、彼の見ているその夢がいい夢に変わるようにと、
背中を撫でた。


「眠い、もっと眠りたい」

知念はいつもそう言う。


傷つきやすい人ほどたくさんの睡眠量が必要なのは、傷ついた心や脳を修復するのに時間がかかるからだと、

こないだ読んだ本に載ってた。

いつも強がって全く傷ついてないフリ。
泣いたりも滅多にしない。

だけど人一倍繊細で、人の気持ちを感じやすくて誰より傷つきやすい子だって、
俺はちゃんと知ってたよ。


そんな知念があんな目にあって、本当に見ていられないくらい傷ついた。

ふとした事で言葉が詰まって無言になる時、

知念の心の中に、何が映ってるの?

俺は不安でたまらない。

でも目を背けるわけにはいかない。
俺がそばにいて、知念を見ていたい。

ずっと。

俺のために・・・
あんなちっぽけな事で一人で悩んで、

その代償はあまりにも大き過ぎたね。


何で?どうして?

その思いをつい口に出してしまった日もあった。
誰よりも知念が傷ついたのに。



「どこ行くの・・・」

そっとベッドを抜けようとしたら、知念がか細い声でつぶやく

「起こした?ごめんね」

そっと頭を撫でると、首を横に振る
「今たまたま起きただけ」と。

「喉渇いたから、下で水飲んでくるだけだよ」

そう言うと、知念も立ち上がって俺にそっと寄り添う。

「僕も行く・・・」



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