長篇小説
□彼女
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「ふーん」
僕がそう言うと、
涼介は不服そうに「それだけ?」と言う。
学校から仕事への移動の途中。
ちょっと時間が余ったので、カフェで時間潰し。
涼介の告白に、僕はそれ以外言う事がなかった。
”あの子と、付き合う事になったから”
・・・「ふーん」って思った。
なんだろ
だってそれしか思いつかなかったし。
おめでとう!
のほうが良かったのかな?でも、別に・・・
「ふーん」っていうのが、僕の正直な気持ち。
だって、そんな事聞かされて僕はどうしたらいいわけ?
ああ、僕って意地悪なのかな。
「で?付き合う事になったから何」
「え?」
「もう僕とこうやって、帰りにダラダラしてる暇がないって言いたいの?」
「はあ?」
「別にいいよ、明日から他の友達と帰るし。仕事だって一人で行くから」
なんでこんなきつい言い方しかできないんだろ。
でも、そんな言葉しか出て来ない。
あの子かぁ。
僕は、涼介がつきあう事になったっていう同じクラスの女の子の事を思い浮かべた。
可愛くて優しくて女の子っぽくて、まあいかにも涼介が好きそうな子かな。
明日からあの子が涼介の「彼女」
・・・なんかピンと来ないけど。
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