長篇小説

□君にしか見せられない顔がある
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ずっとずっと好きだったのに、

ある日突然、苦しくなった。

好きでいる事が苦しくて、一緒にいる時も平静を装えないときがある。

どうしてこんなに苦しいんだろう。

これが切ないって事かな。

片思いは、苦しいものなの?



好きでいる気持ちは嬉しくて、

そばにいられるだけで
しあわせだったのに。



「侑李こっち」

「え?あ、うん・・・」


涼介が時々、僕の事を名前で呼ぶ。

名前で呼ばれるたびに、胸が跳ねる。

少し涼介の後ろを歩くのは、涼介の事をじっと見つめてても気づかれないから。

だけど、すぐ振り返って、

ほらこっちだよ、なんて僕の背中をそっと支えられる。


こんな風にされると、
ちょっと勘違いしちゃうよ。


涼介は、女の子が好きだし、将来も結婚して優しいパパになりそう。

子供が大好きっていつも言ってるもんね。



僕は・・・

好きな人とは結婚できないし、

多分一生独身で、でも、できれば涼介のそばにいられたら、

ずっと友達でいられたらいいな。



「何考えてんの?」

涼介に言われてハッとする。

無意識のうちに涼介の顔をじっと見てたみたい。

「別に?」

ごまかすように、バッグの中の携帯を意味もなく取り出してみたりして。

2人きり、向かい合わせでご飯を食べてると、

僕の心が読まれそうで、怖い。

優しく微笑んで、僕の事をじっと見つめてくる涼介のまっすぐな瞳を、

見つめかえせなくて僕は思わず目をそらす。

どうしてそんな顔するの?

誰にでもそんな顔しないで。

みんな涼介の事が、好きになっちゃうよ・・・。


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