LC短編

□だいじなこと。
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午後の生徒会室で、仕事を手伝っているときだった。
 
「どれがいい?」

ミレイ会長はそう言って、僕の目の前に、3枚の紙を並べた。

B6サイズの紙には、1枚にひとつずつの単語が書かれている。

どれがいいか、と聞かれたということは、僕に選べということなのだろう。

紙に書かれた単語を読んでみる。

『フェイ』
『ウィッシュ』
『リュヌ』

……『妖精』と『願い』と、…『月』?

「…これは、」

言いかけて、顔をあげたことで気づいた。
みんな僕を見ている。それも、なにかとても期待したような顔で。

「…………」

妙な居心地の悪さをおぼえて、つい、言いかけた質問を飲み込んでしまった。
なんだろうか。
もう一度、あらためて生徒会メンバーを見回す。
やはり、なにかとても期待したような顔をして、僕のほうを注目していた。

「……なぜ注目されているのか、わからないのだが」

顔になにかついているのだろうか、と続ければ、苦笑しながらシャーリーが答えてくれた。

「違うちがう!キミがどれを選ぶか、みんな興味があるんだよ!」

「…僕がどれを選ぶか、か」

期待の意味は理解できた。
が、そもそもこれは、何について選ぶものなのだろうか。
僕に記憶がないからわからないだけで、普通なら説明されなくてもわかるようなこと、なのか?

「ライ、眉間にシワ」

スザクに額をつつかれた。
また難しい顔になってるよ、と指摘されて、少し反省する。
もっとまわりを信じて頼れと、昨日言われたばかりだったのに、と。

「……スザク。聞いてもいいだろうか」

「なんだい?僕に答えられることかな?」

スザクがやさしく聞きかえしてくれたので、最初に言いかけてやめた質問を、もう一度してみることにする。

「…これは、何について選ぶものなんだ?」
「あれ、言ってなかったっけ?君の苗字だよ」
「……苗字(ファミリーネーム)…?」

それは勝手に選んで決めていいものだったか、と思わず本気で考え込んだ。ら、今度はミレイ会長に額をつつかれた。

「こーら。そんなに悩まないの!」
「ライ。深刻に考えなくてもいい。お前にはIDがないだろう?そのままだと不便だから、IDの代わりの身分証として使える、学生証を発行することになったんだ」

僕がまだ理解できていないことを察したルルーシュの補足。
 
「……つまり、学生証に記載するために、仮の苗字が必要だということか」

「ええ、そういうことよ」
「みんなで考えた候補の中から、3つまでは絞ったんですけど、そこで意見が割れちゃって、決まらなくって…」
「なあ、ライ!どれがいい?」

カレン、ニーナ、リヴァルも、僕に笑顔を向けてくれている。

胸のなかが、ほんのりとあたたかくなるのを感じる。

「僕が選ぶのは──」



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