LC短編
□だいじなこと。2
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『Lie Katze』
んふふぅ、とふくみ笑いするロイドさんから渡されたIDカードに記載されていたのは、そんな名前だった。
カッツェ。このやさしい人たちが、僕にくれた苗字。
「ざ〜んねんでした〜!今までの“誰でもない”君は、もういなくなっちゃいました!…ひとつ自由を失っちゃったねぇ」
ロイドさんはにやにやしながらそんなふうに言うけれど、IDを作るなんて、簡単なことじゃなかったはずだ。
特派は第二皇子シュナイゼル殿下の直轄だからとか、ロイドさんの顔が広いからとか、セシルさんがいろいろと、僕のIDを作れた理由は教えてくれたけれど…それよりもなによりも、僕はなんだか胸がいっぱいで、しばらく声が出せなかった。
「あ…ありがとうございます、ロイドさん、セシルさん。それにスザクも…、ほんとうにありがとう」
やっとの思いでそれだけは言えたが、僕の驚きはそこで終わらなかった。
プレゼントがある、と言われ、贈られたのは、僕のために開発されたという専用機ランスロット・クラブと、そして……、誕生日、だった。
祝福の言葉をもらい、さらに胸があたたかくなる感覚にひたっていると、上機嫌なロイドさんが、僕の肩に手をかけながら、片手をこちらに差しだしてくる。
「それともうひとつ、ボクからプレゼントがあるんだ〜!」
はいこれ、と渡されたのは、かわいらしい鈴、だった。
「……ロイドさん。何ですかこれ」
「ん〜?鈴だけどぉ?」
「……いえ、それは見ればわかります。僕が訊きたいのは、なぜ鈴をプレゼントされたか、なんですが」
「え〜?教えてほしいィ?」
にたあっ、と、意味ありげな顔で笑われると…。なんだろう、単純に『誕生祝い』と受けとめてはいけない気がする。なにかの発明品、だったり…?
「………お訊きしても?」
なんとなく、聞かないほうがよさそうな気がしてきたのはなぜなんだろう…。
「君、猫(でしょ?だ・か・ら、特派(の飼猫(だってことがわかるようにィ、鈴をつけといてもらおうと思って!」
イイ考えでしょ?と満面の笑みで言われた。
……なんだか頭痛がしてきた……。さっきまで感動してたのに……。
「……ロイドさん。だからって、鈴をつけろというのは、何かが違うと、……あ」
「ロ〜イ〜ドさ〜ん!!」
「痛いいたいイタイっ!」
僕が最後まで言いきるより早く、そしてスザクがなにか意見を口にするよりもなお早く、素早くロイドさんのうしろから接近したセシルさんによって、困った特派主任には、それは見事なアイアンクローがキメられていたのだった。
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