悪夢
□10の衝撃
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「ニア、何か言うことがあるんじゃない?」
すると少年は、顔を上げてきっぱりと、
「はい、先生おはようございます。遅れてすみませんでした。」
そう言った。
申し分のない返答だったが、##NAME1##には不満だった。
違う、そうじゃない。
もっと罰の悪そうな顔をしてもらわなくては。
「…どうして遅れたの?」
他の子供もしんとして、成り行きを見守っている。
しつこくこの気まずい空気を保てば、ニアにも"えらいことをしてしまった、もう二度と先生に背くまい"という気持ちを起こさせることができるはずだった。
「捜し物をしていました」
「捜し物って何?」
「もう見つかったので問題ありません」
「何を探してたか言えないの?本当はただ寝坊しただけなんでしょう?嘘ついてこの場を誤魔化そうたって駄目よ」
##NAME1##のその言葉に、ニアは驚いたように目を丸くした。
「私を疑うんですか?」
「…そうだと言ったら?」
あと少しだ。
あと少しでこの子も私に屈伏する。
しかしニアは、泣きそうな顔一つせず、目だけをキョロリとこちらへ向けて、
「確かに私にはアリバイがないですしね」
と言った。
それも##NAME1##には不満だ。
「ニア、これは探偵ごっこじゃないのよ」
ねじ伏せるのだ。
「分かってるの!?」
何としても。
「分かりません。何をそんなに怒ってるのか…」
まだ歯向かうの?
「分からないなら、教えてあげる。あとで先生の部屋にいらっしゃい、いいわね?」
ニアはしばらく目を大きく開いてこちらを見ていたが、観念したらしくはいと返事をした。
子供たちが食事をしている間、##NAME1##はニアの部屋を下見した。
子供の嗜好を知ることは、教育に欠かせないことだ。
「ふーん、おもちゃが好きなんだ。生意気なこと言っても、やっぱり子供ね」
ざっと部屋を見回し、##NAME1##はニアの分析を完了し、その攻略法を叩きだした。
恐らく、モノばかりを与えられ、親の愛情を、オブジェクトを介してしか受けることが出来なかったのだ。
人の心の温もりを知らず、形あるモノに囲まれることで安心感を覚える可哀相な子供なのに違いない。
ならば、話は簡単。
人と触れ合う喜びを、その温かさを、教えてやればよいのである。
確固たる答えを導き出し、##NAME1##は背筋を伸ばしてその場を後にした。