悪夢
□10の衝撃
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「失礼します」
淡泊な挨拶とともに、ニアが##NAME1##の部屋にやってきた。
「待ってたわ、ニア」
部屋に入るなり、ニアは室内を興味深そうに見渡した。
そりゃそうだろう。
ふふん、と、##NAME1##は内心ほくそ笑む。
対ニア用のその部屋は、あらゆるモノが取り払われており、あるのは##NAME1##が座っている木製の机と椅子、風に揺れるカーテンくらいである。
勿論、ニアをモノから解放し、自然の素材に触れさせたいが為だ。
「…殺風景ですね」
手にした古い戦闘機モデルの玩具を抱え、立ち尽くしたままニアが言う。
「ええ。…不安?」
##NAME1##の、全てを見透かすような一言に、しかしニアは首を傾げた。
「不安とはどういう意味ですか」
「その玩具を、こっちへ頂戴。あなたとオモチャ抜きで話がしたいの」
優しく言って手を伸ばした##NAME1##だったが、ニアは激しく拒絶した。
「なぜ逆らうの!?」
「なぜはこっちの台詞です!私は先生の話を聞くつもりで来ましたが、先生と話をする気はありません」
何という言い草だろう。
いや、しかし、頭ごなしに叱っては駄目だ。
##NAME1##は深呼吸をして頭を冷やし、次の作戦に移ることにした。
「OK。分かったわ。ニア、私と話す気がないなら…この子で、どう?」
言って、##NAME1##は机の下から、手作り(っぽく見える)人形を取り出した。
「昨日、徹夜で作ったの」
ニアは、感動を隠せない様子で、
「アーリー・クランプトンの作ですね。ウィンチェスター片隅のあまり知られていない技師ですが、私は彼女の作品が好きです。……で、それをどうしましたって?」
##NAME1##は青くなった。
「さ、さっき…その、お店で」
「アーリーの店に目を付けるとはなかなかです。あそこは全品手作りですから」
皮肉としか言えないその台詞に、しかし##NAME1##は勇気を得た。
「でしょ?"はじめましてニア、私##NAME1##、仲良くしてね"」
手に持った人形をベタに動かし、自分の名前を付けてニアに話し掛けてみる。
頑固なニアも、おもちゃになら心を開くだろう。
しかし、右手でプラモデルを動かし、もう片方の手で頬杖をついたまま、冷たい声でニアは言った。
「どうしたんですか、##NAME1##先生。私達は初対面ではないです」
イラッ
「"先生?なに言ってるの〜。私はニアとお話したくて、おもちゃの世界の魔女に人間の言葉を……」
がしゃっ
ニアの飛行機が、無言で##NAME1##の人形に激突した。