冗談

□一つ屋根の下〜外伝〜
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「竜崎…これ、君の名前?」

「はい」


「ね、ねぇなんて読むの?」

「ローライトです」

『ローレライ!?』
「ローライトです」

カードと竜崎を見比べて、月は途方に暮れたように首を振った。


「…外国人、だったのか」

「そういうことになりますね」


「何だよ、僕外国人とばっか戦わされて…」

「ライト可哀相…」

「へっへっへ」

気持ち悪い笑い方をして竜崎は紅茶をかき回した。


「あっ、僕のプロフィールが載ってるぞ」

単行本を独り占めして喜ぶ月。
しばらくして、その笑顔が曇った。


【夜神月用語録
「僕は新世界の神になる」
月の口癖ともいえる一節。自己陶酔により、倫理感が著しく欠如した思い上がり甚だしい台詞。】



「何だこの書き方は!?この著者、僕に何か文句あるのか?」

「あるんじゃないですか、へっへっへ」

「あのさ、竜崎さん。さっきからその笑い方、何?気に入って何回も使ってるみたいだけど」

「キャラ作りです」

「ふーん…やめた方がいいよ。ねぇライト、ミサのプロフィールは?」

「ん?ミサの…ああ、あるよ。」

冷めた瞳で流し読みしていく月。
ややもせず、その目がはっと見開かれた。


「ミ、ミサ…ッ」

「何?」

「お前、僕の死後約一年一ヵ月で死んでる!!」


「ウソ!」

「嘘じゃないよ、命日がそうなってるんだ…」

「大場先生的には自殺だそうですよ」

「そ、そんな…。でも、そっか…。ミサ、ライトのいない生活に耐えきれなくて…」

「それにしちゃ、一年間も何してたんだよ?」


……。


「バレンタインデーであげる相手がいないのに気付くまで僕のこと忘れてたのか?」


「そ、そんなわけ…」


ミサは慌てて否定したが、月の眼差しは冷ややかだ。

「ミサが僕なしで一年も生活できるとは思えない」


「ミサもそう思う…」

「影武者じゃないんですか」


突如口を挟んだ竜崎に、ミサは「ああ!」と反応した。

「きっとそうだよ!マッツー達が、ライトそっくりの別人を探して、そいつをミサに会わせてたんだよ!」

「妥当だと思います」

「さすが竜崎さん!てかミサ可愛そう〜」




「無理だよ」


月の一言に、それまで上げ上げだったミサのテンションが頭を打った。

「ライト、なんで?」


「僕みたいな完璧な顔とスタイルを兼ね備えた奴はこの世に二人といない。無理だ」

「はあ?ライト君、勘弁してください」

「何だよ」

「最終回に近づくにつれ顔面総崩れだったじゃないですか」

そう言うと竜崎は、壁ぎわに寄って行き、肩越しに振り向いてみせた。


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